デジタル大辞泉
「遺伝子診断」の意味・読み・例文・類語
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遺伝子診断
いでんししんだん
特定遺伝子の有無や遺伝子の異常から病気を診断する手法。遺伝子の異常で起こる病気は約4000種もあるといわれるが、本人の細胞の遺伝子(DNA)配列を調べることで、早期かつ確実に診断ができる。また、羊水の胎児細胞から、血友病や筋ジストロフィー症、フェニルケトン尿症、嚢(のう)胞性線維症、ハンチントン病など数十の病気の出生前診断や性別判定が可能になっている。直接の遺伝病でなくても、癌(がん)などのように、なりやすい傾向や体質などと関連する遺伝子がある病気では、将来の発病の可能性を確率的に診断できる。また、特定のウイルスや菌特有の遺伝子を調べて、患者が感染しているかどうかの診断も行うことができる。遺伝子診断は、遺伝子の特定配列を自動的に増幅するPCR法の出現で簡略化されて、急速に実用化が進んだ。ただし、出生前診断が妊娠中絶に直結しやすいことや、将来の発病可能性による差別など、遺伝子診断とその影響を、倫理面から懸念する声もある。
[田辺 功]
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知恵蔵
「遺伝子診断」の解説
遺伝子診断(がんの)
遺伝子の検査でがんを診断すること。PCR(polymerase chain reaction=DNAポリメラーゼ連鎖反応)法により、ごく少量の材料からでも正確に遺伝子を診断することが可能になった。遺伝性がんの場合、血液細胞などから原因遺伝子を検出することにより、発病前に確定診断をすることができる。例えば、大腸に次々にポリープが発生してがん化する家族性大腸ポリポーシスの場合、その原因遺伝子であるAPCがん抑制遺伝子を検出・診断することで、早期に対策を立ててがんから守ることができる。また、塩基配列が個人間で異なる部分、1塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)を検出すると、個人差を診断できる。がんになりやすさ、薬剤の効きやすさ、副作用の感受性などを前もって知ることが可能となる。このような診断・治療法は、一人一人の個性に合った治療という意味で、オーダーメード治療、あるいはテーラーメード治療と呼ばれる。
遺伝子診断(生活習慣病の)
遺伝子診断は、これまで単一遺伝子の異常による遺伝病や、遺伝性の特殊ながんの診断に用いられてきた。最近では、生活習慣病に関連する遺伝子診断が、医療機関などで行われるようになってきた。多くの生活習慣病には複数の遺伝子が関連しており、ある遺伝子に異常があるからといって直ちに生活習慣病になるわけではない。しかしある程度、生活習慣病にかかりやすいかどうか判定ができる。その上で、生活習慣の改善(食事・ストレス・運動など)に気を付け、生活習慣病の予防ができるのである。ただし、遺伝子診断は、診断結果の個人情報保護や、遺伝カウンセリングの必要性など、いくつかの課題を伴っている。
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遺伝子診断(総論4:臨床試験)
遺伝子検査は,血液腫瘍のWHO分類の病型診断と予後推定に有用であり,分子標的薬などの治療選択や効果判定に欠かせない(Jeffeら,2001;滝ら,2005).臨床検査として重要な方法は,ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)である.[谷脇雅史]
■文献
Jaffe ES, Harris NL, et al eds: World Health Organization Classification of tumors. In: Pathology and Genetics, Tumor of Hematopoietic and Lymphoid Tissues, IARC Press, Lyon, 2001.
滝 智彦,谷脇雅史:造血器腫瘍の染色体検査(遺伝子検査)(Medical Practice編集委員会編), pp566-568,文光堂,東京,2005.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
遺伝子診断【いでんししんだん】
遺伝子(DNA)のうち,病気特有のDNA配列の有無を確認する診断法。これによって胎児期から遺伝性疾患の診断が容易に,かつ正確に行えるようになり,また,将来かかりやすい病気の診断も可能になった。
→関連項目出生前診断
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遺伝子診断
いでんししんだん
gene diagnosis
遺伝子の欠損や異常などにより生じる遺伝子病を発見するために行なわれる診断方法。 DNAプローブを用いて染色体上の異常遺伝子を検出する方法が一般的であるが,最近,DNA合成酵素を利用したポリメラーゼ・チェイン・リアクション (PCR) が開発され,非常に高感度な診断が可能となってきた。
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