胎児をつつむ羊膜amnionと胎児の間の空所である羊膜腔を満たす液体。初めは無色透明かあるいはごくわずかに濁るが,後には胎児の生毛や脱落上皮,脂肪,尿が加わり灰白色から帯黄色となる。羊水は羊膜と胎児から分泌され,妊娠経過とともに増量し,妊娠第8ヵ月ころ最も多くなる。しかし,第10ヵ月に入ると減少しはじめ,出産予定日を過ぎると著しく少なくなる。羊水の量は出産予定日ごろで50~500ml。800ml以内であれば正常とされる。化学組成は妊娠の時期によって異なるが,全般を通じて弱アルカリ性に保たれる。羊水の産生,吸収の機序については不明な点も多いが,羊膜の上皮細胞や上皮下結合組織を通じて分泌,吸収されると考えられており,また胎児が飲み込むことによって吸収され,呼吸器や皮膚から,さらには尿として分泌されると考えられている。
羊水量が1000mlを超えた場合を羊水過多といい,これによって妊娠や分娩に異常をもたらす状態になったものを羊水過多症という。羊水過多症では,増加した羊水が胎児を圧迫するとともに,子宮を拡大させることから,早産や前・早期破水,胎盤早期剝離(はくり)などの異常を起こしやすくなる。治療は羊水過多を起こした時期や状態によって異なるが,一般に入院のうえ安静とし,減塩食による食事療法や利尿剤を投与する。ときには羊水穿刺(せんし)を行って羊水を排除したり,陣痛誘発が必要となることもある。
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執筆者:佐藤 孝道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般には羊膜腔(くう)を満たす生理的液体のことで、羊膜液ともよばれ、羊膜上皮細胞から分泌される。すなわち、妊娠時に羊膜に包まれた子宮腔を満たす液で、胎児を保護する役目をもち、胎水ともよばれる。また、分娩(ぶんべん)時には子宮口の開大にも役だつ。羊水は、妊娠初期には無色であるが、末期になると胎児の皮膚、胎脂、うぶ毛なども含まれて白濁する。妊娠末期の羊水量は一般的に600~800ミリリットルを普通量としているが、羊水量の異常には過多と過少がある。このうち、羊水過少症はまれであり、妊娠中に確定診断することがむずかしく、胎動を激痛のように感じたり、胎児にとっては動きにくくて発育が妨げられ、胸郭がへこむ漏斗(ろうと)胸など各種の形態異常を招きやすい。
羊水過多症は、過剰な羊水量によって母児への障害をもたらすもので、一般には2リットル前後のことが多い。数か月かかって徐々に増量する慢性のものと、数日のうちに急速に増える急性のものがあり、腹囲が1メートル以上にも達する。原因は、羊水の産生、循環、後退の経路に障害があれば量的異常が現れるわけで、要するに母体と胎児、あるいはその両者の循環障害による分泌過剰または吸収不全に基づくものであり、妊娠月数に比して腹部が大きく、その波動が著明で、胎児の可動性が大であることなどから診断される。胎児の位置がわかりにくく、心音も聞き取りにくくなる。妊婦も圧迫されて呼吸が苦しくなる。双胎、母体の心臓や腎(じん)臓の疾患、胎児の形態異常などを合併するほか、微弱陣痛や早期破水など種々の異常や早産がおこりやすい。治療はきわめて困難とされ、急性の場合は、人工妊娠中絶を行い、慢性の場合には就床安静を守り、なるべく自然分娩を行わせる。
[新井正夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
…胎盤は正期産では重量450g,径15~20cm,表面積300cm2,厚さ2cmで,卵膜に覆われた胎児面と子宮壁に付着した母体面との間に絨毛群がある。胎児付属物としては胎盤のほかに臍帯(さいたい),卵膜,羊水などがある。臍帯には2本の臍動脈と1本の臍静脈が膠質(こうしつ)に包まれて存在し,長さ50cm,径1.5cmである。…
※「羊水」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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