神幸(しんこう)祭,渡御(とぎよ)祭に対する祭りで,御旅所へ出御(しゆつぎよ)した神霊が本社へ還幸する祭儀のこと。一般に出御の儀よりも事いそいで行われるが,むしろ還幸祭に重点をおく神社も多い。例えば,伏見稲荷大社の稲荷祭では出御の際は裏門からそっと出るが,還幸のときは正面から堂々と威儀をととのえて入御する。また,賀茂別雷神社の御阿礼(みあれ)神事では山から神社に神霊を迎える真夜中の行事が神幸祭の中心をなすことや,奈良地方の神社で,祭りに先だってあらかじめ神霊が頭屋(とうや)などに渡御して何日か逗留の後,祭りの当日に頭屋から神社へ還幸する。この場合もこの行列に重点がおかれ,これに奉幣行事を伴うことが多い。こうした事実から,ごく古い時代にはむしろ神霊を神社に迎えることが本質であったとされ,祭りに限って神社から御旅所においでになるとか,村中を巡るとか言うのはその後の変化とみられている。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…上御霊,下御霊の両神社の祭礼も毎年夏秋に催された。のちには旧暦7月18日に神幸祭,神輿渡御があり,8月18日に還幸祭が行われていたが,中世の後期,応仁の乱ののちに,一時中絶した。1498年(明応7)に復興をとげ,近世になると,上下の両御霊神社ともに旧暦8月11日神幸祭があり,神輿を御旅所に納め滞留ののち,8月18日に還幸の儀式が行われた。…
…神霊の来臨,移動を中心とする神事。渡御祭とかお旅とかお出でともいい,本社に帰るのをとくに還幸祭などともいう。日本の祭りは,神霊の出現を待ってその招迎と鎮送を基本とするので,おのずから神迎えと神送りの儀礼を伴うものが多いが,神霊の動座そのものを神威の顕現形式としてとくに重んじる場合にこれを神幸祭という。…
※「還幸祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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