酸化ウラン(読み)さんかウラン(英語表記)uranium oxide

改訂新版 世界大百科事典 「酸化ウラン」の意味・わかりやすい解説

酸化ウラン (さんかウラン)
uranium oxide

酸化数4,6の化合物が普通に知られる。

化学式UO2。二酸化ウランともいう。酸化ウラン(Ⅵ)UO3水素気流中1000~1100℃で長時間熱し,還元して得られる褐色粉末。比重10.97,融点2176℃。常温でも容易に酸化されてU4O9,U3O7,U3O8などとなる。水,希酸に不溶,濃硝酸過塩素酸には容易に溶ける。

化学式U4O9。UO3結晶に過剰の酸素格子の間に入り込んだ超格子構造をもっている。UO2とU3O8の組成比混合物を真空中1000℃で長時間熱して得られる黒褐色粉末。酸に溶ける。

化学式U3O8。最も普通に知られている酸化物で,センウラン鉱の主成分。ウラン(Ⅵ)の硝酸塩シュウ酸塩,過酸化物あるいは二ウラン酸アンモニウム(NH42U2O7などを空気中700~800℃に熱して得られる。800℃以上で長時間熱すると,しだいに酸素を失ってU3O8-xとなる。黒褐色斜方晶系晶粉。製造の条件によって暗緑色ないし黒色。比重7.9~8.5。

化学式UO3。三酸化ウランともいう。無水和物のほかに水和物がある。シュウ酸ウラニルUO2C2O4あるいはUO3の水和物を熱するか,U3O8を高圧酸素中で熱して得られるが,製法によって非晶質およびα,β,γ,δ,ε,ζ,ηなどの結晶相のものが知られており,黄色ないしだいだい色,暗赤色となる。いずれも酸に溶けてウラニル塩となる。比重7.29。水和物にはUO3・2H2O,UO3・H2O,UO3・1/2H2Oがあり,いずれもUO3とH2Oの反応によって得られ,ウラン酸とも呼ばれる。黄色粉末。

化学式UO4。4水和物UO4・4H2Oと2水和物UO4・2H2Oが知られている。pH2のウラニル塩水溶液に過酸化水素水を加えると定量的に4水和物が沈殿する。UO4・4H2Oは黄色単斜晶系結晶。空気中で熱すると90℃で2水和物UO4・2H2Oとなる。酸と反応して過酸化水素を放つので,強力な酸化剤である。
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化学辞典 第2版 「酸化ウラン」の解説

酸化ウラン
サンカウラン
uranium oxide

ウランと酸素の化合物.ウランの取り得る酸化状態が多いため,非常に複雑な系で,以下の化合物の組成比は近似的なことが多い.【】酸化ウラン(Ⅱ):UO(254.0).一酸化ウランともいう.金属ウランの表面が酸化されて黒色皮膜として生じることが知られている.[CAS 12035-97-1]【】酸化ウラン(Ⅳ):UO2(270.1).二酸化ウランともいう.酸化ウラン(Ⅵ)UO3を水素気流中で700 ℃ に熱するか,350 ℃ でCOにより還元すると得られる.褐色または黒色の粉末.融点2878±20 ℃.密度10.96 g cm-3.塩素,臭素と赤熱するとウラニル塩になる硝酸に溶けて硝酸ウラニルとなる.アルカリ金属カルシウムマグネシウムによって金属ウランに還元される.おもに発電用原子炉の核燃料として用いられる.[CAS 1344-57-6]【】酸化ウラン(Ⅴ):U2O5(556.1).五酸化二ウランともいう.UO2Cl2を900 ℃ で熱分解すると得られる.[CAS 12065-66-6]【】八酸化三ウラン:U3O8(842.1).X線光電子分光法によれば Uと Uが1:2の割合で存在する混合原子価状態で,U2・2U O3である.UO3,UO2,UO2(NO3)2などを赤熱すると得られる.α(密度8.395 g cm-3)とβ(密度8.326 g cm-3)の2変態がある.製法により,緑色または黒色をした固体.高温で水素または一酸化炭素で還元されてUO2になる.濃酸と温めると溶ける.フッ化水素によって,フッ化ウランと四フッ化ウランとなる.[CAS 1344-59-8]【】酸化ウラン(Ⅵ):UO3(286.1).三酸化ウランともいう.水酸化ウラニル,硝酸ウラニルあるいは二ウラン酸アンモニウムなどを加熱分解するか,八酸化三ウランを高圧酸素下,900~1500 ℃ に加熱してつくる.製法により,黄褐色または橙赤色の粉末で,非晶質および多くの多形状態がある.吸湿性である.両性的で塩基性酸化物と化合すればウラニル塩を生じる.強熱すると八酸化三ウランに,水素中で熱すると二酸化物になる.アルカリ金属およびアルカリ土類金属と反応して金属ウランになる.鉱酸に溶解してそれぞれのウラニル塩となる.[CAS 1344-58-7]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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