酸化物磁石(読み)さんかぶつじしゃく

改訂新版 世界大百科事典 「酸化物磁石」の意味・わかりやすい解説

酸化物磁石 (さんかぶつじしゃく)

酸化物材料として用いる磁石。人類が初めて手にした磁石は鉄の酸化物の一種である磁鉄鉱であったろうと思われる。現在の代表的な永久磁石としてアルニコ系鋳造磁石とバリウム系フェライト磁石があげられる。前者合金であるが,後者フェリ磁性体であるバリウムと鉄の複合酸化物(バリウムフェライト),またはストロンチウムと鉄の複合酸化物(ストロンチウムフェライト)を材料とする磁石である。

 酸化物が磁石として開発されたのは,1933年日本の加藤与五郎および武井武によってで,コバルトと鉄の複合酸化物であるコバルトフェライトを用い,OP磁石と名付けられた。現在ではOP磁石に代わってバリウム系フェライトが代表的な酸化物磁石となっており,コバルトとかニッケルなどの高価な材料を用いていないことが有利な点である。

 バリウム系フェライト磁石の主成分であるバリウムフェライト,またはストロンチウムフェライトは,マグネトプランバイト型の六方晶の結晶構造をもち,結晶磁気異方性が非常に大きいという特徴をもつ。永久磁石とするにはこれらの粉末材料を加圧成形し,焼成して作る。このようにして得られる磁石は,単磁区粒子の集合体であることおよび材料の著しい結晶磁気異方性のために大きい保磁力をもつ。このほか,ソフトフェライトと呼ばれる鉄の酸化物を主成分とするフェリ磁性体が,高電気抵抗のため渦電流損失がないこともあって,高透磁率材料として磁心に用いられている。
永久磁石 →磁石
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化物磁石」の意味・わかりやすい解説

酸化物磁石
さんかぶつじしゃく
oxide magnet

強磁性亜鉄酸塩 MO・γFe2O3 (Mは金属) を材料とした磁性材料。粉末を成形してつくるので粉末磁石ともいう。磁性亜鉄酸塩はフェライトと通称し,Mの種類により銅フェライト,亜鉛フェライトなどと呼ぶ。Mとして鉄,コバルト,マグネシウム,バリウム,銅,鉛などが単独または混合で用いられ,1~0.01 μm の微粉を焼結または固結剤で成形する。2種の系統がある。 (1) 残留磁束密度6~12キロガウス,保磁力 2000~4000エルステッドと大きいもので,永久磁石材料である。 OP磁石 ( (Co,Fe)O・γFe2O3 ) ,フェロックスデュール FXD磁石 (主成分 BaO・6Fe2O3 ) が代表例で,おもちゃ,発電ランプ,拡声器など応用範囲が広い。 (2) 初透磁率が大で保磁力が 0.1~10エルステッドと小さく,高周波用圧粉鉄心に用いる。Mとして亜鉛を主として銅,マグネシウムなどを混じたフェライトが多く,フェロックスキューブ,フェリンバーなど種類が多い。カーボニル鉄圧粉とともに高周波工業の重要な材料である。

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