出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
強磁性体の磁化方向に逆向きの磁界をかけて、その残留磁化をゼロにするために必要な磁界の大きさのこと。強磁性体をあらかじめ飽和まで磁化しておいたときの値は飽和保磁力というが、これも単に保磁力とよぶことが多い。古くは抗磁力、頑磁力などともよばれた。
保磁力が大きいほど、外部磁界に対して磁化を安定に保てるので、永久磁石材料には大きい値が要求される。逆にトランス磁心材料など交流磁界で励磁されるものは、保磁力がなるべく小さいことが望まれる。このように、保磁力の大小によって、磁性材料をハード(永久磁石用)、ソフト(トランス用)に大別することができる。バリウムフェライト磁石の保磁力は14万、硅素鋼(けいそこう)は40(単位アンペア毎メートル)である。
[太田恵造]
強磁性体やフェリ磁性体に強い磁場を作用させて磁気飽和に達したのち,磁場を減少させていき,0にしても残る残留磁化を完全に消すために,逆方向にある強さの磁場を加える磁場の強さを保磁力という.保磁力は磁性材料やその熱処理によって非常に異なる.永久磁石になるためには保磁力が大きくなければならない.たとえば,約数百 Oe のものがある.それに対しパーマロイなどでは保磁力は0.1 Oe 以下である.[別用語参照]磁化曲線
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…このように実際上,加えた磁場によってはその磁化の大きさの変化しないものを永久磁石という。加えた磁場によって容易にその方向に磁化されやすいものを軟磁性体といい,磁化しにくいものを硬磁性体と呼ぶが,永久磁石は,硬磁性体でなければならず,この磁気的な硬さを示すのは保磁力である。磁気ヒステリシス曲線では縦軸に磁化(または磁束密度),横軸に印加磁場を取り,磁化の大きさを磁場の関数として示してある。…
…このときの磁化(OM)を残留磁化residual magnetizationと呼ぶ。さらに逆向きの磁場を加え,磁場の大きさを増加させるとある磁場の大きさで磁化が0になり,このときの磁場(OC)を保磁力coercive forceという。磁場の大きさの増加とともに逆向きに飽和し,以後,磁場の大きさを減らし,再び最初の方向に磁場を加えると,また飽和磁化を示す。…
…磁場の向きを逆にして,負の向きに増加していくと,曲線はBCと変化し,磁化は0となる。OCは残留磁化を保つ能力を表す目安となるので保磁力という。さらに磁場を負の向きに増加すると,ついに磁化はDに達し負の向きに飽和する。…
※「保磁力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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