重力偏差計(読み)じゅうりょくへんさけい(その他表記)gravity variometer

改訂新版 世界大百科事典 「重力偏差計」の意味・わかりやすい解説

重力偏差計 (じゅうりょくへんさけい)
gravity variometer

ひろく重力ポテンシャルUの空間に関する二次微分(∂2U/∂x2-∂2U/∂y2),∂2U/∂z2,∂2U/∂xy,∂2U/∂yz,∂2U/∂zxの大きさを測定する計器。このうち上下方向(z)に関するUの微分は重力そのものであるから∂2U/∂z2=∂g/∂zなどであり,それぞれ重力の上下・南北・東西方向の変化率(こう配)に相当する。これらは通常の重力計で2点間の重力差を測定することで求められるが,その他の成分はポテンシャル面の曲率に関係し,その測定には狭義の重力偏差計が使われる。

 重力偏差計の構造は,二つのおもりを両端につけた水平な腕の中央を細い糸でつるしたものである。ポテンシャル面が平面でない場合,一般に両端のおもりに作用する重力は平行ではない(あるいは,力の大きさが異なる)ので腕は偶力を受け回転する。この回転はつり糸のねじり力とつりあわされ,ある回転量で止まる。この回転量を種々の向きに計器を置いて測定すると,それからポテンシャル面の曲率に関する情報が得られる。これらの値には地下の微細構造が敏感に反映するので,重力計が開発される以前の1930年代までよく使われた。重力計が使用されるようになって重力偏差計はすたれたが,最近では,この偏差計を使って慣性質量重力質量の等価性の再検証実験が行われ10⁻10精度両者が一致することが確認されたこと,また人工衛星に重力こう配計を搭載して地球重力場の微細構造を追究しようとする試みが始められていることなど,重力偏差計が再認識されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「重力偏差計」の意味・わかりやすい解説

重力偏差計
じゅうりょくへんさけい
gravity variometer

重力ポテンシャルの2次微分係数,すなわちある地点におけるジオイドの曲率や重力の勾配を測定する器械ブダペストで R.エートベッシュが発明したもので,エートベッシュのねじり秤ともいう。一端におもりを直結した棒を水平にし,他端に細い針金でつるしたおもりをつけ,棒の中央を細い針金で支える。2つのおもりに作用する重力の差によって後者の針金のねじれの大きさをはかる。 10-9 ガル感度が問題とされ,この単位をエートベッシュという。このような器械は現在ではほとんど使われていない。

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