山伏(やまぶし)(修験道(しゅげんどう)の行者(ぎょうじゃ))の用いる3種の杖(つえ)の一つ。「こんごうづえ」とも読む。修験者のなかで度衆(どしゅう)とよばれる行者が所持する四角の棒で、長さは行者の身長と同じとする。四方四面は発心(ほっしん)、修行(しゅぎょう)、菩提(ぼだい)、涅槃(ねはん)という行者の内心の展開を示し、各面1寸5分(約4.5センチメートル)、あわせて6寸は、行者の六大(ろくだい)(身体の構成要素)を表す。ほかに檜杖(碑杖)(ひじょう)は円形で先達(せんだつ)が使用し、担杖(かせぎじょう)は担木(かせぎ)ともいわれ、上部が丁字形で初入新客の使用する杖をいう。
[加藤精一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 鎌倉・室町時代にはこの修験道の山伏たちは,吉野,熊野,白山,羽黒,彦山(英彦山)などの諸山に依拠し,法衣,教義,儀礼をととのえていった。歌舞伎の《勧進帳》などで広く知られる鈴懸(すずかけ)を着,結袈裟(ゆいげさ)を掛け,頭に斑蓋や兜巾(ときん)(頭巾),腰に螺(かい)の緒と引敷,足に脚絆を着けて八つ目のわらじをはき,笈(おい)と肩箱を背負い,腕にいらたか念珠をわがね,手に金剛杖と錫杖(しやくじよう)を持って法螺(ほら)貝を吹くという山伏の服装は,このころからはじまった(図)。またこうした法衣は教義の上では,鈴懸や結袈裟は金剛界と胎蔵界,兜巾(頭巾)は大日如来,いらたか念珠・法螺貝・錫杖・引敷・脚絆は修験者の成仏過程,斑蓋・笈・肩箱・螺の緒は修験者の仏としての再生というように,山伏が大日如来や金胎の曼荼羅(両界曼荼羅)と同じ性質をもち,成仏しうることを示すと説明されている。…
※「金剛杖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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