安宅(読み)あたか

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

安宅
あたか

石川県南西部,小松市の地区,旧町名。 (かけはし) 川の河口にある。かつて北前船による商業活動で栄えたが,北陸本線開通後は漁港としてイカ,ブリを水揚げする。小松市街への通勤者が増加している。歌舞伎の『勧進帳』で知られる安宅の関跡がある。

安宅
あたか

能の曲名。四番目物 (→雑物 ) 。作者は観世小次郎信光説もあるが,未詳。義経追捕のために設けられた安宅の新関富樫 (ワキ) が守護する。弁慶 (シテ) は義経 (子方) を強力 (ごうりき) 姿につくり,作り山伏の一行となって新関にかかると,富樫はこれを怪しみとどめる。一同は覚悟を決め,山伏の勤行を始めるが,勧進帳の聴聞を求められ,弁慶が高らかに読上げる。疑いも晴れ,関を通ろうとするとき,強力姿の義経を見出され,供の郎党 (ツレ) は勇むが,弁慶の知略で事なきを得る。安堵する主従のもとへ,先度の非礼をわびる富樫から酒が届けられ,弁慶は一差し舞って喜ぶ (男舞) 。劇的構成をもつ現在物で,のち歌舞伎に入って『勧進帳』となった。

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デジタル大辞泉の解説

あたか【安宅】

石川県小松市西部の地名。北陸道宿駅
謡曲。四番目物観世小次郎信光作。奥州へ落ちる義経主従は、途中、安宅の関で富樫(とがし)に見とがめられるが、弁慶機転で無事通過する。

あん‐たく【安宅】

身を置くのに安全で心配のない所。
《「孟子」公孫丑の「夫れ仁は、天の尊爵なり、人の安宅なり」から》の道のたとえ

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百科事典マイペディアの解説

安宅【あたか】

能の曲目。四番目物観世信光作。現在物。五流現行。作り山伏となって奥州へ下る義経主従の,安宅関における危難を描く。義経を子方にするのはシテの弁慶をクローズアップする能の常套(じょうとう)手段。ワキの富樫(とがし)も劇的に対立する。三味線音楽の題材として好まれ,長唄や義太夫節・一中節などで〈安宅物〉と総称される一連の楽曲群が作られた。最も有名なのは,歌舞伎《勧進帳》の伴奏音楽として作られた長唄作品であるが,能の《安宅》は,歌舞伎の《勧進帳》に比べ,力と力の対決という面が強調される。
→関連項目現在能判官物

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世界大百科事典 第2版の解説

あたか【安宅】

能の曲名。四番目物現在物観世信光作。シテは武蔵坊弁慶。安宅関の関守富樫(とがし)(ワキ)は,源義経捕縛の命を受けている。兄頼朝に追われている義経は,家来の弁慶たちと山伏に変装して奥州へ落ちのびる途中,この関にさしかかる。弁慶は,東大寺復興の寄付を募る山伏と偽り,持ちあわせの経巻を勧進帳と名付けて,寄付募集の趣旨を即席に案文しながら読みあげ(〈読物〉),いったんは通過を許される。しかし,わざと重荷を背負っていた義経が見とがめられたので,弁慶は足弱なため疑われたのだとののしって,金剛杖で打ちすえ,事なく通過する。

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大辞林 第三版の解説

あたか【安宅】

◇ 石川県小松市の北西部、日本海に面する小漁港。北陸道の旧宿駅。安宅の関の遺址いしといわれる所がある。
能の一。四番目物。作者未詳(観世信光作とも)。作り山伏となって奥州へ向かう義経主従が、安宅の関で関守の富樫とがし某にとがめられるが、弁慶の機転で危うく通りぬけるという筋。「義経記」などによる。歌舞伎「勧進帳」の典拠。

あたけ【安宅】

「安宅船あたけぶね」の略。 〔日葡〕

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世界大百科事典内の安宅の言及

【勧進帳】より

…読物は普通の曲にない特殊な曲節に作曲されているが,現在は伝承が絶えている。(2)能《安宅(あたか)》の部分の名。関守の疑いを解くため,弁慶(シテ)が即席に案文しながら偽りの勧進帳を読み上げる部分。…

【問答】より

…仏教では〈論義〉と称し,問者と答者(たつしや)の間には一定の様式があり,その形式は能の謡にも影響を与えている。また修験(しゆげん)の徒の問答も芸能に多くとり入れられ,能の《安宅(あたか)》では,現在も金剛流の特殊演出として〈山伏問答〉(〈問答之習〉)がある。彼らが伝承した修験系の神楽(かぐら)の能には,問答が主体となる曲もある。…

【厠神】より

…【砂山 稔】
[朝鮮]
 朝鮮では,家庭内の守護神であるソンジュsŏngjuの配下にあって刑罰を執り行う気難しい若い女性の神と考えられている。便所の天井に布片や紙片を貼り付けたり吊るしたりする以外には神体を表示するものはなく,特定の祭日もないが,家庭の平安を祈る〈安宅〉の祭りには厠にも餅を供えたりする。またふだん便所を使用する際には,厠神の気を損なわないように咳払いをして告げてから入る習わしがある。…

※「安宅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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