金打(読み)きんちょう

精選版 日本国語大辞典 「金打」の意味・読み・例文・類語

きん‐ちょう ‥チャウ【金打】

〘名〙
僧侶が特定の時に鉦(かね)を打つこと。
左記(1180か)「金打員数事。初三打事。当流継園御法則也」
② (━する) 口頭で起請誓約を行なうときの作法。金属器を打ち合わせることにより、神仏をその場に立ち会わせるために行なわれた。武士太刀、小刀などの刃や鍔(つば)などを、相手のそれと打ち合わせ、僧侶は小さな鉦(かね)女子は鏡を打ち合わせた。かねうち。
※看聞御記‐応永二四年(1417)六月一四日「三郎非張行之由金打陳申」
※大観本謡曲・錦戸(室町末)「君に心変り申すなと、堅く申しつけ金打(キンチャウ)せさせて候」
③ 転じて、かたい約束。誓い。かねうち。
※浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)二「ハテ疑ひ深い。コレこの通り毒見の金打(キンテウ)

かね‐うち【金打】

〘名〙 (━する) 自分が大切にしている金属類を打ち合わせて起請(きしょう)すること。武士は刀の刃や鐔(つば)、僧侶は小さな鉦(かね)、女子は鏡を用いた。きんちょう。〔俚言集覧(1797頃)〕

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デジタル大辞泉 「金打」の意味・読み・例文・類語

きん‐ちょう〔‐チヤウ〕【金打】

近世、誓いの印として、金属製の物を打ち合わせたこと。武士は刀の刃またはつば、女子は鏡などを打ち合わせた。かねうち。
「てうてうてうと―し、本蔵が心底しんていかくの通り」〈浄・忠臣蔵
かたい約束。誓い。
「親にも隠し包みしは、大事を漏らさぬ心の―」〈浄・妹背山

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金打」の意味・わかりやすい解説

金打
きんちょう

自分がだいじにする金属製品を相手のそれと打ち合わせ、堅い約束(起請(きしょう))をたてること。「金打する」という動詞形で多く用いられ、「かねうち」と訓読もした。おもに江戸時代習俗で、武士はけっして違約しないという誓いのしるしに、自らの刀の刃や鍔(つば)を相手のそれと打ち合わせ、僧侶(そうりょ)は小さな鉦(かね)を、婦女子は鏡を互いに打ち合わせた。転じて堅い約束や誓約そのものをいう。

[宇田敏彦]

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