金融統計(読み)きんゆうとうけい

改訂新版 世界大百科事典 「金融統計」の意味・わかりやすい解説

金融統計 (きんゆうとうけい)

通貨金融機関諸勘定,金融・証券市場の取引状況などの金融に関する諸統計を指す。金融統計は,主として経済動向分析や金融機関の財務分析の資料として作成されるもので,目的に応じて種類はきわめて多岐にわたっている。大半の金融統計は金融機関の業務記録を基にして作成されること,また大部分が全数調査であることから,統計としての信頼性は高い。反面,金融制度や金融機関の経理方式の変更等によってデータが不連続となりやすく,また類似指標が多く紛らわしいので,利用に当たっては十分留意する必要がある。

 おもな統計を概観すると,通貨に関する統計としては,日本銀行券発行高・補助貨流通高,マネー・サプライおよびマネタリー・サーベイmonetary surveyなどがある。このうちマネー・サプライは,マクロ経済的視点から一国の通貨総量を金融機関の負債勘定から導き出し,これをさまざまな角度から把握しようとするもので,金融政策運営上重要な指標とされている。一方,マネタリー・サーベイは,一国の通貨総量が通貨当局および金融機関のどのような資産構成(貸出し,対外資産等)と対応しているかを把握しようとする統計である。次に金融機関の諸勘定に関する統計には,日本銀行や民間金融機関,政府金融機関等の主要勘定統計がある。これは,各金融機関の資産・負債の主要勘定を金融機関別または種類別等に集計したもので,金融統計のなかでは最も基礎的な統計である。なお,預金と貸出勘定については,預金者別預金,業種別貸出し,住宅・消費者信用等のように保有主体別や目的別に分類した詳細な統計も作成されている。金融・証券市場に関する統計には,コール・手形売買市場の資金残高,株式・公社債市場の取引状況等の統計がある。このほかの金融統計には,資金循環勘定,各種金利利回り手形交換,金融機関損益などがある。このうち資金循環勘定は,国民経済計算体系の一環として一国の金融取引を包括的に鳥瞰ちようかん)しようとするもので,マクロ経済分析には欠かせないものである。統計書には,《経済統計月報》《経済統計年報》(ともに日本銀行調査統計局),《財政金融統計月報》《銀行局金融年報》《大蔵省証券局年報》(いずれも大蔵省)のほか,各金融・証券団体や国際機関,各国政府・中央銀行等の発行する刊行物がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融統計」の意味・わかりやすい解説

金融統計
きんゆうとうけい
financial statistics

通貨の発行・流通状態や金融機関の経営内容、さらにはそれらの資料をもとにして作成される通貨増減要因や資金循環状況などを示す、金融に関する各種の統計に対する総称公的統計としては、日本銀行(日銀)が調査しているものが中心であり、日銀ホームページの「統計」コーナーで総覧できる。このほか、財務省ホームページの「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」も金融統計にあたる。いずれも基本的に全数調査であり、また速報性があることが、他の公的統計に比べたときの金融統計の長所であろう。逆に、「お金には色がない」ので、どのように使われたかを把握することのむずかしさもある。

 内容の面から分類すると、お金の価格(金利)に注目した統計と、量に注目した統計に大別できる。

 金利関連のデータでは、日銀が政策金利に位置づけている無担保コールレート(オーバーナイト物)や、主要銀行が優良企業に融資する際の最優遇貸出金利のうち、貸出期間が1年未満の短期プライムレートおよび1年以上の長期プライムレート、財務省が公表している満期までの期間別の国債利回りのデータなどが該当しよう。

 量に注目したデータでは、現在の日銀が政策変数として重視しているマネタリーベースや、世の中で流通しているお金の量を示すマネーストック、業種別、企業規模別などの区分で公表している貸出先別貸出金などがある。

[飯塚信夫 2020年9月17日]

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