鉄骨鉄筋コンクリート造建築(読み)てっこつてっきんコンクリートぞうけんちく

改訂新版 世界大百科事典 の解説

鉄骨鉄筋コンクリート造建築 (てっこつてっきんコンクリートぞうけんちく)

鉄骨の骨組みを鉄筋コンクリートで包んだ構造を鉄骨鉄筋コンクリート造steel framed reinforced concrete constructionと呼び,これによる建築を鉄骨鉄筋コンクリート造建築またはSRC造建築という。これには2種類あって,鉄骨の骨組みだけで荷重を支え,鉄筋コンクリートは単なる被覆である場合と,鉄骨,鉄筋,コンクリートの3者が一体となって荷重を支える場合とがある。後者はとくに,地震国日本で独自の発達をした構法で,日本で鉄骨鉄筋コンクリート造建築というときは,ふつうこれを指す。この場合でも,鉄筋と鉄骨の比率はいろいろあり,鉄筋コンクリートを鉄骨の座屈止め程度に用いる前者に近いものから,鉄骨断面が小さく鉄筋コンクリート造建築に近いものまである。

1912年アメリカのW.H.バーは鉄骨鉄筋コンクリート造に関する論文を書いているが,建築物への最初の利用は内田祥三により13年設計された旧東京海上ビルである。また,内藤多仲が耐震壁適所に配置し,彼独自の耐震理論で設計した鉄骨鉄筋コンクリート造の旧日本興業銀行本店が23年に完成している。その直後に発生した関東大震災により,欧米からの技術による建築が多くの被害を出したのに反し,この日本興業銀行本店は被害皆無といってよく,旧東京海上ビルの被害もきわめて軽微であった。そのほかでも鉄骨鉄筋コンクリート造による建築のほとんどが被害軽微であったため,この震災後,日本の大型建築物は,昭和30年代後半から出現した柔構造理論による鉄骨造高層建築物を除き,ほとんどが鉄骨鉄筋コンクリート造によることになった。

鉄骨鉄筋コンクリート造は,耐震的には鉄筋コンクリート造より優れ,耐火的には一般に鉄骨造より経済的である。超高層建築の下層部や7~25階程度の高層建築によく用いられる。この構造では,断面で鉄骨がコンクリートの中に埋め込まれ,コンクリートは密実に充てんされていること,鉄骨の重心とコンクリートの重心が大きく離れないことが必要である。しかし,断面の選び方では柱とはりの接合部など鉄骨や鉄筋にじゃまされてコンクリートが十分に回りにくい場所がでやすい。そのため,鉄筋コンクリート造建築の場合と同様,土木で用いるコンクリートに比べ,かなり軟らかいコンクリートを用いる。

 関東大震災でその強さを発揮した耐震壁は,その後の多くの地震の経験を経て,その評価はますます高まった。鉄骨鉄筋コンクリート造建築では,通常,鉄筋コンクリート耐震壁を主要な耐震要素として取り扱うが,場合によっては,耐震壁を鉄骨ブレースまたは鉄板に置き換える。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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