日本大百科全書(ニッポニカ) 「錐体外路症候群」の意味・わかりやすい解説
錐体外路症候群
すいたいがいろしょうこうぐん
無意識の運動をつかさどる錐体外路系のどこかの障害によって引き起こされる種々の症状をいう。主として、体の動きが鈍く少なくなる寡動(かどう)性症状(筋硬直、寡動)と、身体または身体の一部が自分の意志とは関係なく動いてしまう症状(不随意運動)に大別される。
筋硬直(固縮)は筋肉の緊張が強くなり、筋肉がこわばっている状態である。たとえば、患者の手を持って肘(ひじ)の関節を中心に腕を曲げたり伸ばしたりすると、運動の始めから終わりまで鉛管を折り曲げるときのような持続的で一様な抵抗、あるいは非連続的な歯車様のがくがくとした抵抗を感じる。寡動とは動作緩慢あるいは無動ともよばれるもので、日常の動作がのろくなり、動作の開始や切り替えに時間がかかり、自発動作が少ない状態をいう。このような寡動性症状は、錐体外路系の病気のなかでも、主として黒質が冒されるパーキンソン病に目だった症状である。
錐体外路系の障害と関係のある不随意運動には、静止時の振戦をはじめ、舞踏病、アテトーシス、ジストニーdystonia(異緊張症)、バリスムballism(舞踏病より激しい腕や手の不随意運動)など種々のタイプがある。これらにはそれぞれ特徴があるが、互いに類似性もあり、一つの病気にいろいろな不随意運動がみられたり、病気の経過中に一つの不随意運動から他のものへと移動することもある。しかし、静止時振戦はパーキンソン病に、ヘミバリスム(片側舞踏病)は視床下核の血管障害に特徴的である。基底核のうちで、主として線条体(尾状核と被殻からなる)が冒されると、舞踏病やアテトーシス、ジストニーが発現すると考えられている。ハンチントン病は、尾状核の変性と関連がある。
[海老原進一郎]