主として四肢および顔面におこるややゆっくりした不随意運動で、手足の末端に特異な肢位を示すようになる。アテトーゼともいう。随意運動をつかさどる中枢神経系には、大脳の皮質細胞からいろいろの指令を出す錐体(すいたい)路系と、四肢の運動系の調節をしている錐体外路系があり、錐体外路系の調節に異常を生ずると種々の不随意運動が現れてくる。アテトーシスはその一種で、原因は、錐体外路系のうち、脳の基底核が血管障害、黄疸(おうだん)、炎症、腫瘍(しゅよう)、薬物などによって破壊されるためである。睡眠中は現れず、目が覚めて活動しているときにおこり、精神緊張などで増強する。出産障害による低酸素症、新生児黄疸などにより小児期から発症するものが多かったが、近年交換輸血その他によって激減した。治療としてはあまり有効なものはないが、トランキライザーなどの薬物療法や、大脳の視床部への冷凍ないし破壊術などが試みられ、多少の効果をあげている。
[里吉営二郎]
アテトーゼAthetoseともいう。手足に生ずるゆっくりとした不随意運動の一つで,脳性麻痺のアテトーシス型にしばしばみられる。主として大脳基底核の障害によって起こり,脳性麻痺のほか,周産期の無酸素脳症や血液型不適合妊娠による核黄疸が原因となることが多い。患者は,手足のとくに先端を不自然にひねったり,過度に曲げたり伸ばしたりする。これらの運動は,正常には行いがたいか,行いえないようなものであることが多く,また意志の力で止めることができないために,通常の日常動作が妨げられる。またしばしば,そのように不自然な手足の状態が,強直したように続く。顔面や首にも同様の不随意運動を伴っていることが多く,顔を不自然にしかめたり,首を斜めにかしげたりするような動きが絶えずみられる。精神緊張時や動作をはじめようとするときに起こりやすい。確実な治療法はまだない。
執筆者:岩田 誠
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…たとえば,線条体の病変では舞踏病のような不随意運動を生ずるが,これは運動の過多現象,すなわち過動症hyperkinesiaである。過動症にはこのほか,アテトーシスやジストニーなどがあるが,いずれも意志の力では止めることのできない異常運動である。一方,同じ大脳基底核の病変でも,黒質や淡蒼球がおかされると無動症akinesiaが起こり,筋肉の力は正常であるのに,随意運動の量が減って,なかなか動けなくなってしまう。…
※「アテトーシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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