開花・結実習性(読み)かいかけつじつしゅうせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「開花・結実習性」の意味・わかりやすい解説

開花・結実習性
かいかけつじつしゅうせい

顕花植物は成年に達すると開花結実(結果)し、種子をつける。この場合、植物体上に花芽を分化する時期と花芽のつけ方、それが開花して結実し、発育する仕方などの諸性質を総括して開花・結実習性という。一、二年生植物の開花・結実は一季で終わるが、永年生植物では草本、木本の別はあっても、毎年それを繰り返し、一部の熱帯植物では年2回以上、周年連続的に行うものもある。開花は時期、着花位置、着花数、雌花雄花・完全花などと、結実は受粉方法、受粉時期、受精方法、着果数などと関係し、植物別に特徴をもつ。これらの特性は基本的には各植物のもつ遺伝的性質によって決定されるが、環境によって大きく変異するものもある。

 開花・結実習性に影響する要因としては、植物自身では、栄養状態、幹、枝、節位などの位置的特性などが主となり、環境要因としては、土壌、水分、肥料、日長、照度、温度などがある。もちろん、これらは相互に影響しあうもので、生理的にみると、オーキシンジベレリンサイトカイニン、アプシジン酸その他の種々の植物成長調節物質のバランスによって決定される。

[飯塚宗夫]

野菜

ユリやネギでは茎頂部に花房をつけ、側枝による開花はない。トウガラシやトマトは茎頂部に花(花房)をつけ、枝はその下部葉腋(ようえき)から出、さらにまた頂部に花をつけ、これを繰り返す。ナスは葉と葉の節間に花をつける。また、ウリ科の植物をみると、カボチャ類は雌雄異花同株であるが、雌花の着生は、原始栽培系では、日本カボチャの場合、孫づると子づるに、西洋カボチャでは親づるに多い。また、マスクメロンは子づるに、マクワウリは孫づるに多い。キュウリは育種が進み、品種分化の幅が広く、完全雌系統から完全雄に近い系統まであり、雌花着生性は変異に富む。また、温度、日長、環境に敏感で、低温・短日は雌性化を促進するが、ジベレリンは雄しべの発育を促し、両全花を誘導する。

[飯塚宗夫]

果樹

果樹の開花・結実習性も種類によって型があり、温帯・暖帯性の果樹では、今年伸長した新梢(しんしょう)上に6~8月ごろに花芽を形成し、これが翌年になって新梢発育に伴い開花・結実する。大別すると次のようになる。

(1)頂生花芽型 今年生新梢の頂芽が花芽となる。しかし、栄養状態によっては頂芽に続く腋芽も花芽となる。ビワ、ナシ、リンゴ、クルミ(雌花)、ペカン(雌花)などがあげられる。

(2)頂・腋生花芽 今年生充実枝の先部2、3芽に花芽をもった芽が分化し、これが翌年新梢となり、その基部の2、3の葉腋に開花する。カキや柑橘(かんきつ)類などがそれで、いずれも新梢でみると腋生花芽が確認される。クリもカキに近いが、花穂の基部に雌花を、先部に雄花をつける。また、今年生充実枝の下部数芽には雄穂のみをもった芽が分化する。

(3)腋生花芽 今年生新梢の腋芽が花芽となり、イチジクでは継続して発育開花し、モモ、アンズ、サクランボ、スグリでは翌春に開花する。ブドウでは翌春、花芽をもった新梢が伸びて、その基部の2、3の葉腋に花房をつける。

 摘芯(てきしん)や剪定(せんてい)は、開花・結実習性を熟知して目的に沿って行う必要がある。とくに、なり年(表年)とならない年(裏年)のあるような隔年結果性を示すカキなどでは、剪定や摘果によって樹勢を適当に保つことが肝要である。樹勢の一つの目安として樹体内の炭水化物(C)と窒素(N)の比率(C/N)で示すことがあり、炭水化物に比べて窒素が多すぎても少なすぎても花芽形成や結実は不良となる。

[飯塚宗夫]

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