身体や視覚、知的などの障害がある人らが取り組むスポーツ。リハビリ目的で始まったとされる。車いすテニスや視覚障害者の柔道など既存のスポーツのルールを変更して行われている競技が多い。一方で重度障害者用に開発されたボッチャや、アイマスクをしてプレーするゴールボールなど独自のスポーツもある。パリ・パラリンピックは8月28日~9月8日の12日間で22競技が実施される。聴覚障害者向けの「デフスポーツ」はパラ大会の対象外となっている。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
心身に障害をもつ人々に身体的・精神的・社会的リハビリテーションの機会を与え,障害者の社会的再統合あるいは統合をはかるためのスポーツで,英語ではdisability sportと表記されるものである。
世界で最初に組織された障害者のスポーツクラブは,1888年にできたベルリンの聴覚障害者のスポーツクラブとされている。医学的治療の一補助手段として導入されることの多かった身体活動を,人類共有の文化として障害者が楽しむスポーツにまで高めたのは,医学の進歩に伴う疾病構造の変化,つまり死亡の激減に伴う慢性的疾患や障害者の増加と,この事実に対する思想の変化,つまり残された能力をいかによく発揮させるかという,人間に対する尊厳とその対応のしかたによるものであると考えられている。障害者スポーツ発展の貢献者は,イギリスのグットマンL.Guttmann(1899-1980)で,彼は1948年,第14回ロンドン・オリンピック大会の開会式の日,ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院内で,戦争で傷ついた脊髄損傷による車いす使用の下半身麻痺者16人の参加を得て,アーチェリー競技会を開催した。この競技会は,52年にオランダからの参加者を得て国際的な大会(国際ストーク・マンデビル競技大会,ISMG)となり,現在では国際ストーク・マンデビル車いすスポーツ連盟International Stoke Mandeville Wheelchair Sports Federation(ISMWSF)として発展している。この競技会は60年にはイタリアの関係者の熱心な招きを受け,ローマ・オリンピック大会のあと,同じ会場と選手村を使用して開催され,以来,オリンピックが開かれる年にはイギリスを離れ,オリンピック開催国で開催するという原則もできた。さらに76年,おもに手や足の切断者と視覚障害者を対象にしていた国際障害者スポーツ協会The International Sports Organization for the Disabled(ISOD,1962設立)とともに,カナダで障害者オリンピック競技大会を開催し,80年には脳性麻痺者をも含めて行われるようになった。この大会は,国際オリンピック委員長から〈オリンピック〉という名称の使用を公認されてはいないが,夏の大会について言えば,陸上競技,水泳などごく一般的な競技種目を中心に,車いす使用者のためには卓球,アーチェリー,バスケットボール,ウェイトリフティング(パワーリフティング),スヌーカー(ビリヤードの一種),射撃,フェンシング,ローンボウル(ボウリングの一種),テニスを,切断者のためには卓球,アーチェリー,ウェイトリフティング(パワーリフティング),スヌーカー,射撃,ローンボウル,バレーボールを,視覚障害者のためにはローンボウル,ゴールボウル(バレーボールの一種),柔道を,そして脳性麻痺者のためにはボッチャ(ペタンクの一種),サッカー,乗馬,自転車を競技種目とし,今では,60年の大会を第1回として,パラリンピック(もう一つのオリンピックの意で使っている)と呼称し,障害者のオリンピックとして発展している。また冬の大会についていえば,国際的には76年にパラリンピック冬季競技大会にまで高まり,98年の長野大会(第7回)では,アルペンスキーのクロスカントリースキー,バイアスロン,アイススレッジスピードレース,アイススレッジホッケーが実施され,クロスカントリースキーには精神発達遅滞者の種目も正式に位置づけられている。
このほか,障害者スポーツの国際的団体としては,1924年から4年に1度国際スポーツ大会を開催している国際聴覚障害者スポーツ委員会International Committee of Silent Sports(ICSS)や,68年から精神発達遅滞者のためのスポーツ大会を開催している国際スペシャル・オリンピック委員会International Special Olympic Committee(ISOC)がある。ICSSは第1回大会をフランスで開催し,ヨーロッパから9ヵ国の参加を得,ISOCは第1回大会をアメリカで開催し,それぞれ発展している。ところで,このような発展につれて,国際的には78年,脳性麻痺者国際スポーツ・レクリエーション協会Cerebral Palsy-International Sportsand Recreation Association(CP-ISRA)ができ,81年にはISODを母体に,国際盲人スポーツ協会International Blind Sports Association(IBSA)が独立し,ISODは切断者などを中心とする組織となった。そして86年には,国際精神障害者スポーツ協会International Association of Sports for the Mentally Handicapped(INAS-FMH)も発足。これらの統括団体としての国際パラリンピック委員会International Paralympic Committee(IPC)が89年に構築され,障害者スポーツの統合をめざし,またオリンピック競技大会との併合(インクルージョンinclusion)を志向しているところである。
一方日本の障害者スポーツは,1962年ISMGに初めて2人の選手が参加,64年にはいわゆるパラリンピック(麻痺者を意味するparalysed,あるいは下半身麻痺を意味するparaplegiaとOlympicを組み合わせてつくった,ISMGに対する日本の愛称)を開催した。65年財団法人日本身体障害者スポーツ協会が発足し,全国身体障害者スポーツ大会が,秋の国民体育大会の直後に同じ会場で行われることとなり,67年からは障害者自身の運営する全国的規模のスポーツ大会も車いすバスケットボールをはじめとして,スキー,アーチェリー,陸上競技,水泳,卓球,柔道,バドミントン,そしてテニスなど,各種の競技が各種の障害者によって,また障害の枠をこえて催されている。
執筆者:中川 一彦
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