デジタル大辞泉
「雇用調整助成金」の意味・読み・例文・類語
こようちょうせい‐じょせいきん〔コヨウテウセイ‐〕【雇用調整助成金】
労働者の失業予防を目的とし、国が事業主に対して行う支援措置の一。景気変動や金融危機などの理由で収益が悪化し、事業の縮小を余儀なくされた事業主が従業員を一時的に休業・教育訓練・出向させる際に支払う休業手当や賃金の一部を国が助成する。雇調金。
[補説]平成20年(2008)の世界的な金融危機で企業による解雇や雇い止めが急増。国は雇用悪化に歯止めをかけるため、雇用調整助成金の支給要件を大幅に緩和し、助成率を引き上げた。同年12月に新設された中小企業緊急雇用安定助成金では、助成率が5分の4に引き上げられ、翌年2月には大企業に対する助成率が2分の1から3分の2に引き上げられた。さらに同年6月には、所定の期間解雇等を行っていない企業に対する助成率が中小企業は10分の9、大企業は4分の3に引き上げられた。また、支給限度日数が3年間で150日から300日に延長され、1年間200日までとしていた制限が撤廃された。
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雇用調整助成金
企業が従業員を解雇せず、一時的に休業させるなどの手段で雇用を維持する場合、国が手当を部分的に補塡する制度。2008年のリーマン・ショック時は製造業が中心だった。新型コロナウイルス禍では宿泊・飲食サービス業や運輸業、小売業といった幅広い業種で活用された。不正受給も相次ぎ、20年春から22年末までで総額約187億8千万円に上った。
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雇用調整助成金
こようちょうせいじょせいきん
景気変動や産業構造の変化に伴い、事業活動の縮小を迫られた事業主が一時的な雇用調整をした場合に、従業員の賃金や費用の一部を国が助成する制度。雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づき、解雇や希望退職などを未然に防ぎ、雇用継続を支援するねらいがある。1975年(昭和50)、当時の労働省(現、厚生労働省)が雇用調整給付金として創設し、1981年に雇用調整助成金に変更した。事業主が従業員に対し、一時休業(一時帰休)、関連会社などへの出向、教育訓練を行うことで従業員の雇用を維持した場合、支払った賃金やかかった費用のうち、中小企業については3分の2、中小企業以外の企業に対しては2分の1を雇用保険から助成する。2022年(令和4)10月時点で、1人1日当りの受給上限は8355円で、教育訓練には1人1日当り1200円が加算される。受給期間は、一時休業・教育訓練が1年間で最大100日分、3年間では最大150日分で、出向は最長1年間。かつては助成業種を指定していたが、2001年(平成13)からすべての業種が対象となった。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行時には、雇用保険臨時特例法(正式名称は「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」令和2年法律第54号)に基づき1人1日当りの受給上限を1万5000円に、助成率も中小企業は5分の4、大企業は3分の2に引き上げ、受給条件なども緩和された。このため毎年100億円に満たなかった支給額は、2020~2022年度で6兆円を超えた。
雇用調整助成金の受給を希望する場合には、労働局やハローワークに申請する。受給するには、事業主が雇用保険に加入し、最近3か月間の月間平均の、(1)事業活動規模(売上高、生産量など)が前年同期比10%以上減少、(2)雇用量(雇用保険被保険者数と派遣労働者数)が前年同期比で、中小企業の場合で10%超かつ4人以上増えていない、それ以外の企業で5%超かつ6人以上増えていない、などの条件を満たす必要がある。一時休業は労使協定に基づき、従業員が一斉に1日1時間以上労働時間を短縮するなど全1日にわたって実施される必要があり、教育訓練は知識・技能・技術の習得や向上を目的とするもので、受講日に業務につくことはできない。出向は3か月以上1年以内に元の事業所へ復帰する必要がある。雇用調整助成金を不正受給した場合、受給額の返還を求められ、事業所名の公表や、悪質な場合には詐欺罪での告発などの措置がとられる。
[矢野 武 2023年1月19日]
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「雇用調整助成金」の意味・わかりやすい解説
雇用調整助成金【こようちょうせいじょせいきん】
雇用保険法に基づき,雇用保険上の要件や労働大臣の業種指定条件などを満たす企業が従業員に対して休業,教育訓練,出向を実施する場合に,雇用保険基金から賃金や費用の一部が支給される制度。景気変動により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に,失業予防や雇用安定化を図ることを目的に,国が事業主に対し賃金や費用の一部を助成する。2000年以前は助成対象事業所に鉄鋼業などの特定雇用調整業種や特定不況業種と呼ばれた構造不況業種への助成金がかなりの割合を占めていたため,構造不況業種の温存策だとして批判された。2001年10月の制度改正によって,業種にかかわらず,事業活動の縮小を余儀なくされている事業主に助成金が支給されることになった。2002年度には,職場を限定し時間単位で従業員を休業させる緊急対応型ワークシェアリングに対しても助成金受給が可能となった。2008年以降の世界金融危機で急激に悪化した経済状況で企業による解雇・雇い止めが急増し,国は雇用悪化に歯止めをかけるため,雇用調整助成金の支給要件を大幅に緩和し助成率を引き上げた。2008年12月に新設された中小企業緊急雇用安定助成金では,助成率が5分の4に引き上げられ,翌年2月には大企業に対する助成率が2分の1から3分の2に引き上げられた。さらに同年6月には,所定の期間解雇等を行っていない企業に対する助成率が中小企業は10分の9,大企業は4分の3に引き上げられた。支給限度日数が3年間で150日から300日に延長され,1年間200日までとしていた制限が撤廃された。2012年末に成立した第二次安倍政権は,雇用調整助成金を景気の回復とあわせて縮小する方向を打ち出し,〈雇用の維持から失業なき労働移動の実現〉〈衰退産業から成長産業へ労働者をスムースに移動させる〉として,労働移動支援助成金を拡充するとした。2014年度政府予算では,従業員を転職させたい企業や,転職者を受け入れた企業に出すための金額を大幅に拡充。再就職支援会社の利用費や訓練費用を補助するとした。これとセットで不況時に雇用を守る企業に出す〈雇用調整助成金〉は半減させ,助成基準を厳しく見直す方針。安倍政権が成長戦略の一環として位置づける〈行き過ぎた雇用維持型〉から〈労働移動支援型〉への雇用政策の転換を促進する,としている。1990年代から2000年代を通じて実施されてきた雇用対策の大転換といえる。
→関連項目雇用調整
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雇用調整助成金
こようちょうせいじょせいきん
subsidies for employment adjustmennt
不景気や経済情勢の変化により雇用情勢の悪化した業種で,労使間協定で労働者の休業,教育・訓練,出向を実施する際,賃金などの手当の一部を政府が事業主に助成する制度。業界団体の申請を受けて労働大臣が業種指定する。 1992年8月の総合経済対策で指定基準の緩和が決定され,制度の活用促進がはかられた。休業の場合は休業手当の2分の1 (中小企業では3分の2) ,教育・訓練では賃金の2分の1 (同3分の2) と訓練費の一部を支給する。 1994年2月から不況対策で休業手当を3分の2に引上げるなど率が暫定的に高められている。景気変動による解雇を避け,雇用を安定させることがねらい。業種としては,不況下の機械,ソフトウエアなどが多く,95年1月1日現在で 304業種が指定されている。
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雇用調整助成金
企業が事業活動を縮小せざるを得ない状況になり、社員の休業や教育訓練、出向などの雇用調整を行なう場合、国が賃金や費用の一部を支給する制度。一定の条件を満たせば、給付金の交付が受けられる。雇用調整には様々な方法があるが、希望退職や解雇など深刻な雇用調整を未然に防ぎ、雇用の継続を支援するのが狙い。旧労働省が1975年に創設し、従来は指定業種などが定められていたが、2001年の改正により、業種に関係なく利用できるようになった。
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雇用調整助成金
減産や休業を余儀なくされた企業が雇用を維持するために従業員を休ませたり、教育訓練を受けさせたりする場合に、従業員に支払う休業手当や教育訓練費などの一部を国が助成するしくみを「雇用調整助成金制度」といいます。
(2009/2/16掲載)
出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の雇用調整助成金の言及
【休業手当】より
…1973年秋のオイル・ショック以降大規模な[雇用調整]に関連して,指定業種に限り,雇主が負担する休業手当の一定部分を雇用保険会計から補塡(ほてん)する雇用調整給付金制度が74年に設けられたが,これに対しては一時帰休を促進するとの批判も多い。なお同制度は,81年に類似のものと整理統合され,雇用調整助成金になっている。【上井 喜彦】。…
【雇用調整】より
…これは,景気の変動など,個別企業の通常の努力によっては対応することが困難な理由により事業活動の縮小を余儀なくされた業種(労働大臣が指定)に属する企業に対して,一時帰休の実施に伴って支払った休業手当につき一定の給付金を支給するものであった。その後81年に,教育訓練,出向に関する給付金など類似のものと整理・統合され,雇用調整助成金となっている。【柳本 紀男】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」