労働基準法は、使用者の都合で労働者を休業させた場合、平均賃金の60%以上の賃金を支払う必要があると定めている。厚生労働省は新型コロナウイルスに関連して労働者を休ませた場合、労基法上の休業手当の支払い義務に該当しなくても、労使で話し合った上で手当を支払うことが望ましいとしている。手当の一部を国が
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工場の焼失、原材料の不足あるいは不景気で仕事がないというような理由で、使用者が、労務に従事する意思のある労働者に労働させなかった場合、その期間中、当該労働者に支払いを義務づけられている手当のこと。その額は平均賃金の60%以上であり、労働基準法第26条において、罰則(119条の2)と、場合によっては未払い金と同額の附加金(114条)の制裁付きで、使用者に支払いを強制している。休業には、工場全体もしくは一部の操業を停止するというような場合のみならず、特定の労働者の労務提供を拒絶する場合も含む。
使用者側の都合により休業した場合の賃金がどうなるかについては、民法に基づき支払いを請求する方法もある。一つは民法第413条にいう受領遅滞の責任を追及するもので、労働者が労務の提供をしているのに使用者がこれを受け取らなければ賃金全額を受け取ることができる。もう一つは民法第536条2項にいう危険負担の責任を追及するもので、使用者の責任で労働者が労働に従事できない場合には、労働者は賃金全額を受け取ることができる。しかし、これらの民法の規定は、取決めで適用を排除できるし、民法に基づいて賃金支払いを請求する場合には、当該の休業が、使用者の故意、過失またはこれと同視しうる理由によるものであることなどを証明しなければならない。また、賃金の支払いを強制する監督機関もないので、結局、裁判に訴えなければならず、労働者にとってはたいへん困難なことである。そこで、賃金を唯一の収入源とする労働者の「人間らしい生存」を最低限保障するために設けられたのが休業手当の制度である。したがって、使用者の責任による休業とされる場合も民法より広く考えられるのであって、天災地変その他の経営外的事情に起因する不可抗力によるもの以外で、使用者の経営管理上の責任によるものがこれにあたる。たとえば、不況により操業短縮をし、労働契約を存続させつつ労働者を一時的に休業させる一時帰休の場合も、休業手当の支払い義務がある。
労働基準法により義務づけられるのは平均賃金の60%であるが、これは最低額であって、これを上回ることは許されるが、下回る取決めをしても無効である。また、民法上の要件を満たすことができれば、残りの40%についても請求できる。なお、休業手当も賃金であるから、労働基準法上の賃金保護の規定が適用される。
[吉田美喜夫]
労働基準法26条は,雇主の責めに帰すべき事由による休業の場合,平均賃金の6割以上の支給を雇主に義務づけており,これを休業手当という。天災地変や労働者の責めに帰すべき事由による休業の場合は除くが,雇用契約の主旨と労働者の生活保護という建前から雇主の責任がひろく問題とされ,いわゆる経営障害による休業の場合も,経営者としての不可抗力を主張できないかぎり,雇主は手当の支給義務を負っている。また一時帰休(帰休制度)についても,欧米のレイオフとは違って雇用関係が存続していることから,上の規定が適用される。1973年秋のオイル・ショック以降大規模な雇用調整に関連して,指定業種に限り,雇主が負担する休業手当の一定部分を雇用保険会計から補塡(ほてん)する雇用調整給付金制度が74年に設けられたが,これに対しては一時帰休を促進するとの批判も多い。なお同制度は,81年に類似のものと整理統合され,雇用調整助成金になっている。
執筆者:上井 喜彦
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…しかし,企業倒産時に労働者の預金返還請求に応じられるよう,使用者に社内預金の保全措置を義務づけている(賃金の支払の確保等に関する法律3条)。
[休業手当]
労基法26条によれば,使用者の責めに帰すべき事由によって休業する場合には,平均賃金の60%以上を労働者に支払わなければならない。ところが,民法536条2項は,債権者(使用者に相当する)の責めに帰すべき事由によって,債務者(労働者に相当する)が債務(労務のこと)を履行しえなかったときは,債務者は反対給付である賃金を失わないとしている。…
※「休業手当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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