雌雄異体の動物において、異性(主として雌)をひきつけ、配偶者として選定される要因となるような身体的特徴(主として雄の)が進化する現象をいう。雌雄淘汰(とうた)、性選択、性淘汰などともよぶ。1871年にC・ダーウィンが初めて提唱した。彼は、自然選択は環境にもっとも適応した個体に働くのに対し、雌雄選択は、雄のなかで配偶行動に関して他の雄より有利な形質をもったものに対して働くと考えた。この説は配偶行動において雌が雄を選ぶという推定に基づいているが、このことはその後多くの種で確認された。さらにまた、雄の外形や色彩、声などの諸特徴が雌に対する求愛信号となっていることも数多く立証されたことにより、動物全体ではないにしろ、かなりの数の種で雌雄選択という現象がおこったものと考えられている。クジャクやフウチョウなどの雄は独特の求愛行動を行い、その際、尾羽や飾り羽を雌に誇示する。一方、雌は、雄のなかでもっとも強い刺激を与える雄を受け入れる。このような例は雌雄選択による雄の形質の進化の典型と考えられる。このほかにも多くの動物で雄が雌にみられない形質をもつが、そのすべてが雌雄選択によるものとは思われない。シカなどの角(つの)はむしろ雄どうしの闘争に役だつものとして進化したと考えられる。また、生存条件が厳しい環境で生活する種においては、自然選択が雌雄選択よりも強く働くため、捕食者にとっても目だつような雄の特徴は発達しにくいと考えられている。
[木村武二]
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