難民救援施設(読み)なんみんきゅうえんしせつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「難民救援施設」の意味・わかりやすい解説

難民救援施設
なんみんきゅうえんしせつ

日本に上陸したインドシナ難民ボートピープル)を保護し援護する施設として始まり、2006年(平成18)のインドシナ難民の受け入れ終了後は、条約難民(難民認定者)や第三国定住難民の支援を行っている。日本では、政府がアジア福祉教育財団に援護業務を委託、1979年(昭和54)同財団は「難民事業本部」を設置し、インドシナ難民定住支援、難民として保護を希望する人への援助、海外難民状況調査、ボランティア育成などを行っている。また関連施設の「国際救援センター(現、RHQ支援センター)」では、日本定住を希望する難民を受け入れ、日本語教育、社会生活適応指導、就職斡旋(あっせん)、センターを退所した難民定住者へのアフター・ケアなどを実施している。

 1975年(昭和50)ベトナム戦争終結後、ベトナム・ラオスカンボジア(インドシナ三国)では新政権が発足、新体制の下で迫害を受けるおそれのある人々や不安・不信をもつ人々が国外へ脱出したが、それら多くのインドシナ難民は、日本へも上陸した。インドシナ難民の流出が増大するなか、国連難民高等弁務官事務所UNHCR)は、宗教団体や日本赤十字社(日赤)に対して難民の収容援護業務に協力を求めた。各宗教団体は難民の受入れを開始し、日赤も1977年より援護事業を開始、全国12施設で受入れを行った(~1994年)。一方、日本政府は、日本定住受入れを求める国際社会の要請もあり、1979年「インドシナ難民対策連絡調整会議」(2002年8月「難民対策連絡調整会議」に改組)を内閣に置いて、定住を支援する方針を決定、同年11月にはアジア福祉教育財団に援護業務を委託した。同財団は「難民事業本部」を設置し、日本定住を希望する難民を保護して日本語教育、職業訓練、養親・里親の斡旋や、生活援助資金の支給などを行う「定住促進センター」を兵庫県姫路市(1979年12月)と神奈川県大和(やまと)市(1980年2月)に開設した。しかしこの2施設だけではインドシナ難民の到着ラッシュに対応できず、しばらくは各宗教団体や日赤などの団体が運営する施設に依存する状態が続いていた。その後1982年2月にようやく、一時庇護(ひご)のため仮上陸を許可した難民を入所させる「大村難民一時レセプションセンター」を長崎県大村市に開設、1983年4月には、上陸後一定期間を経過した長期滞在者を入所させ、当面日本社会で自立できるよう日本語教育や就職斡旋などを行う「国際救援センター」を東京都品川区に開設した。

 1980年代後半以降、出稼ぎ目的のインドシナ難民の流出が増加したため、1989年(平成1)6月に「インドシナ難民国際会議」で包括的行動計画(CPA:Comprehensive Plan of Action)が採択され、インドシナ難民に対するスクリーニング制度(難民資格認定作業)が導入されて、認定されなかった者は本国に送還されることになった。その結果、インドシナ難民の流出が減少、1994年スクリーニング制度は廃止され、以降インドシナ難民も一般の難民と同様に扱うこととなった。インドシナ三国の政情がある程度安定し、アジア各国にとどまっていた多くのインドシナ難民も大半が帰還もしくは第三国に定住し、インドシナ難民問題はいちおう落着した。

 このような状況を受け、1995年に「大村難民一時レセプションセンター」、1996年に「姫路定住促進センター」、1998年に「大和定住促進センター」が閉所した。2005年度末でのインドシナ難民の受け入れ終了が決定し、「国際救援センター」も2006年3月に閉所、難民一般を救援する後継施設「RHQ支援センター」が同年4月に開所した。なお1996年に「難民事業本部」は「関西支部」を兵庫県神戸市に開設し、中部地方以西に居住しているインドシナ難民定住者への支援を行っている。

 難民救援施設でも、日本国際ボランティアセンター、シナピス(大阪市)などの民間組織の活動が大きく貢献している。

[編集部]

『国連大学・創価大学編『難民問題の学際的研究』(1986・御茶の水書房)』『山神進著『難民問題の現状と課題』(1990・日本加除出版)』『加藤節・宮島喬編『難民』(1994・東京大学出版会)』『アジア福祉教育財団難民事業本部編・刊『姫路定住促進センター16年誌――日本で最初のインドシナ難民定住促進の役割を終えて』(1996)』『難民受入れのあり方を考えるネットワーク準備会編『難民鎖国日本を変えよう!』(2002・現代人文社)』『本間浩著『難民問題とは何か』(岩波新書)』

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