電気防食(読み)でんきぼうしょく(英語表記)electric protection

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

電気防食
でんきぼうしょく
electric protection

海中における金属表面に腐食の起こる第1段階の反応は,海水のように電解質の溶液と接する金属と溶液の界面に電位を生じる電気化学反応である。たとえば合金などはさまざまな成分による条件と溶液側の種類,温度などにより局部的に電位が異なり,相互間に電池を形成して腐食する。このような腐食を防ぐ方法に,金属を直流の陰極として強制的に通電する陰極防食法があり,日本ではこの方法を,通常,電気防食法と呼ぶ。一方,アルマイト被膜処理のように金属表面に電気化学的に不動態域をつくって防食する方法を陽極防食法といい,この方法では常時あるいは断続的に電流を流す。

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百科事典マイペディアの解説

電気防食【でんきぼうしょく】

水中・土中など水溶液環境に接している金属製構造物の電極電位を操作して腐食を防止すること。たとえば海水中や土壌中の鉄鋼は局部電池を生成して腐食が進行するから,それが陰極になるように電流を通して防食を図る。構造物に防食電流を生じさせるには,構造物を直流電源の陰極に結線する方法と,低電位の亜鉛,アルミニウム,マグネシウムなどを犠牲陽極として構造物と接続する方法がある。船,港湾施設,埋設管などに応用。
→関連項目船底塗料防食

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世界大百科事典 第2版の解説

でんきぼうしょく【電気防食 electrolytic protection】

水溶液環境に接している金属製構造物の電極電位を操作することによって,その構造物の腐食を防止する技術。電極電位を基準値(防食電位)以下に下げることで目的を達成するカソード防食法cathodic protection(陰極防食ともいう)と,電極電位を上げて不働態領域に保つことで目的を達成するアノード防食法anodic protection(陽極防食ともいう)とがある。アノード防食は化学工業において無機酸などを使う装置の防食法としての適用例が知られている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

電気防食
でんきぼうしょく
electric prevention for corrosion

水中や土中にある鉄鋼などの金属物体に電気を流して、その腐食を防ぐことをいう。
 金属の腐食は、あたかもその微細なある箇所が電池の正極、別の箇所が負極となり、これらが短絡されたものであるかのようにしておこる。これを局部電池作用といい、局部電池の負極の箇所の金属はイオン化して腐食され、その際に生じる電子が正極の箇所に移動して酸素の還元や水素の発生をおこす。鉄鋼体にその局部電池の負極よりも負の電位をもつイオン化傾向の大きい亜鉛やマグネシウムを接続すると、これら金属が優先的に腐食され鉄鋼体は腐食を免れる。このような方法を犠牲アノード法、流電陽極法などという。これとは異なって、防食すべき物体と黒鉛などの安定な電極材とを直流電源の負と正端にそれぞれ接続すると、電子は電流とは逆向きに、正極から負極へ向かって流れるので、対象物体はイオン化されず、その表面で酸素の還元などがおこり腐食を免れる。これを外部電源法という。これらの方法は、いずれも金属に電子を流し込み防食するのでカソード防食法(陰極防食法)といわれるが、これに対して、チタンなどの構造物体では、これを外部電源の正極に接続してその表面全面に耐食性の酸化膜を定常的に形成させて防食することも可能であり、これをアノード防食法(陽極防食法)という。電気防食は、船体、地下埋敷管など広範囲の物体の防食に用いられている。[米山 宏]
『J・M・ウエスト著、石川達雄・柴田俊夫訳『電析と腐食』(1966・産業図書) ▽C・ラングレン著、吉沢四郎他訳『金属の腐食防食序論』(1978・化学同人)』

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