改訂新版 世界大百科事典 「電解加工」の意味・わかりやすい解説
電解加工 (でんかいかこう)
electrolytic machining
電解液中に2枚の金属板を浸して両極とし,適当な電流を通ずると,陽極側は溶出し,陰極側には析出が生ずる。したがって加工物を陽極,工具を陰極として両者を狭い間隙(かんげき)を保って対向させ,加工物からの溶出を起こさせることによって,工具電極の形状に応じた加工を行うことができる。これが電解加工の原理であり,工具の損耗がほとんど生じないという特徴をもつ。加工物の機械的性質に無関係に加工ができるため,超硬合金などの高硬度材料の加工も可能である。また加工熱や加工力が作用しないために,加工変質層や表面粗さが小さく,かつ方向性のない良好な表面が得られる。電解液として通常使用されるのは,食塩水や硝酸ナトリウムの溶液である。工具電極としては銅,黄銅,ステンレス鋼など電解液に不溶性のものが利用される。なお,電解作用によって生じた陽極酸化被膜を研削作用によって除去し,加工能率の向上を達成しようとする加工法として電解研削がある。
執筆者:稲崎 一郎
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