電解加工(読み)でんかいかこう(その他表記)electrolytic machining

改訂新版 世界大百科事典 「電解加工」の意味・わかりやすい解説

電解加工 (でんかいかこう)
electrolytic machining

電解液中に2枚の金属板を浸して両極とし,適当な電流を通ずると,陽極側は溶出し,陰極側には析出が生ずる。したがって加工物を陽極,工具を陰極として両者を狭い間隙(かんげき)を保って対向させ,加工物からの溶出を起こさせることによって,工具電極の形状に応じた加工を行うことができる。これが電解加工の原理であり,工具の損耗がほとんど生じないという特徴をもつ。加工物の機械的性質に無関係に加工ができるため,超硬合金などの高硬度材料の加工も可能である。また加工熱や加工力が作用しないために,加工変質層や表面粗さが小さく,かつ方向性のない良好な表面が得られる。電解液として通常使用されるのは,食塩水や硝酸ナトリウム溶液である。工具電極としては銅,黄銅,ステンレス鋼など電解液に不溶性のものが利用される。なお,電解作用によって生じた陽極酸化被膜を研削作用によって除去し,加工能率の向上を達成しようとする加工法として電解研削がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電解加工」の意味・わかりやすい解説

電解加工
でんかいかこう
electrolytic machining

水溶液中における金属の陽極的溶解現象を利用して金属材料の加工を行う方法。すなわち、工具電極(これを陰極とする)の形状および寸法をくふうし、被加工物である金属材料(これを陽極とする)の所要の部分に陽極的溶解作用を集中させ、材料を所定の形状と寸法に仕上げる。この方法によれば、機械加工が困難な硬い材料や、もろい材料でも加工できること、機械加工と違って仕上げ面に加工ひずみや加工変質層が生じないこと、複雑な形状の加工も1回の工程でできること、加工速度を電流密度に比例して大きくすることができること、などの利点がある。

 電解加工においては陽極的溶解作用を局所に集中させるために、工具電極と被加工物とをきわめて近い距離(通常0.02~0.7ミリメートル)に設置し、両者の間のすきまに電解液を大きな速度(6~60メートル/秒)で流動させる。被加工物が鉄鋼材料の場合、電解液には通常10~15%の塩化ナトリウム溶液が用いられる。電解電圧は通常5~20ボルト(直流)、また電流密度は30~200アンペア/平方センチメートル(直流)である。高い加工精度を得たいときには硝酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムなどの溶液を用いることもある。

[杉本克久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電解加工」の意味・わかりやすい解説

電解加工
でんかいかこう
electrolytic machining

電気分解を利用した機械加工法。加工する金属を陽極とし,アルカリ性電解液中で,陰極との間に直流電流を流して,陽極としての加工金属を溶かし,陰極と同じ形に成形仕上げをする。普通の工具では加工困難な,超硬合金などの加工に用いられる。

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百科事典マイペディア 「電解加工」の意味・わかりやすい解説

電解加工【でんかいかこう】

工作物を陽極,鋼または銅製の型を陰極として,わずかなすき間で対向させ,電解液中で電流を流して加工部分を陰極と同一形状に除去する加工法。耐熱鋼,超硬合金など,通常の工具では加工の困難な材料の形彫や穴あけに利用。

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