静電塗装(読み)セイデントソウ(英語表記)electrostatic finishing(coating)

デジタル大辞泉 「静電塗装」の意味・読み・例文・類語

せいでん‐とそう〔‐トサウ〕【静電塗装】

負に帯電した塗料を、接地アース)により正極となった被塗物に噴霧すること。その向きや凹凸によらず被塗物全体に塗料が付着し、また少ない使用量で済む。

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改訂新版 世界大百科事典 「静電塗装」の意味・わかりやすい解説

静電塗装 (せいでんとそう)
electrostatic finishing(coating)

静電塗装置,乾燥装置等を備えた一連の塗装装置で塗装仕上げを完了する工程。静電塗りとは,接地した被塗物を陽極とし,塗料噴霧装置を陰極として,これに負の高電圧を与えて両極間に静電界をつくり,噴霧させた塗料粒子を負に帯電させて,反対極である被塗物に効率よく塗料を付着させることである。静電塗装機には二つの型があり,一つは静電気の力で塗料を微粒化し,この粒子を静電力で被塗物に付着させる方式(静電霧化式)であり,他は塗料を機械的な力,たとえば圧縮空気や塗料にかかる高圧力でスプレーガンから噴射させて微粒化し,これに電荷を与える方式(エア霧化式,エアレス霧化式)である。塗装の形態としては,ふつうのスプレーガンのように手持式のものと,付帯設備としてトロリーコンベヤを設けて自動塗装を行うものとがある。塗料粒子が電荷をもっているので,電位発生源である被塗物の裏側にも塗料が付着すること(これを静電効果という),塗料の損失が少ないこと,工業塗装管理が容易であることが特徴である。電圧はふつう70~100kVが適用される。静電塗装では,溶剤型塗料,水性塗料,粉体塗料の塗装が可能である。ただし水性塗料等の電気抵抗値の低い場合(およそ0.2MΩ以下),酸性または塩基性物質を含有していて電気抵抗値の低い場合は不適当であり,静電効果も得られない。静電塗装は,1939年ころからアメリカで研究され,日本では50年前後から採用されるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「静電塗装」の意味・わかりやすい解説

静電塗装
せいでんとそう
electrostatic coating

1940年アメリカのランズバーグHarold P. Ransburg(1911―91)により開発されたスプレー塗装法の一種。アースした被塗物を正極、塗料噴霧装置を負極とし、直流高電圧(70キロ~100キロボルト)をかけて両極間に静電界をつくり、塗料微粒子を負に帯電させて、電気力線に沿って飛行させ、正極の被塗物に塗着させる塗装法。

 この方法での塗装は、従来の方法に比べ、塗料の節減、塗装速度の向上、省力化公害の低減、作業環境の改善など多くの利点をもつため、自動車、オートバイ車体および関連部品、鉄道車両、家電製品、スチール事務機器、住宅関連部品その他大量生産の工業製品の塗装に、現在広く採用されている。静電塗装装置には、塗料の微粒子化を静電気の力で行う静電霧化方式と、圧縮空気など機械的な力を利用するガン型塗装機があり、前者は主として回転円盤型電極を使用し、塗着効率が高い。後者は塗着効率はやや落ちるが、取扱いが手軽で均一塗装性が優れている。

[岡原光男]


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百科事典マイペディア 「静電塗装」の意味・わかりやすい解説

静電塗装【せいでんとそう】

金属への吹付塗装に際し,塗料噴霧装置に負の直流高電圧をかけて塗料微粒子を帯電させ,接地した被塗装物との間の静電気的な力を利用して塗装する方法。従来の吹付塗装に比べ,塗料のむだをはぶき,均一の塗装面が得られ,かつ大量生産に向くため工業的に広く利用されている。
→関連項目塗装

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「静電塗装」の意味・わかりやすい解説

静電塗装
せいでんとそう
electrostatic painting

コロナ放電を利用して塗料の微粒子を負に帯電し,静電力により接地電位にある物体表面に塗装する方法。普通の噴霧塗装と比較して塗料の飛散が少く,一様な品質のよい塗装ができる。

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世界大百科事典(旧版)内の静電塗装の言及

【静電気】より

…静電気応用の大部分は静電気力の利用が占めている。すなわち,工場の排煙や室内空気中の微粒子をコロナ放電を利用して荷電させ,クーロン力で除去する電気集塵,同じ原理で液体や粉体の塗料や農薬を対象に塗着する静電塗装,静電農薬散布がある。短繊維を用いるとあらかじめのりを塗った布や金属の表面に繊維を垂直に植毛でき(静電植毛),また導体と絶縁物などの分離も可能である(静電選別)。…

※「静電塗装」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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