肝臓に脂肪が蓄積することで起こる肝炎で、アルコール性などの他の肝障害の原因を除外したもの。NASH(ナッシュ)と略称される。肥満、糖尿病のほか、メタボリック症候群などを有する場合に多くみられ、中年以上の女性に多い。鉄の過剰が肝障害の増悪因子と考えられ、活性酸素、インスリン抵抗性、サイトカインなどの関与が示唆されている。進行性の経過をたどるが、アルコール性の肝炎に比べて軽度でゆるやかに進行する。近年ではNASHを含む、アルコール摂取が原因でない一連の慢性肝障害をまとめて「非アルコール性脂肪性肝疾患」(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD(ナッフルド))ととらえるようになってきている。
肝臓の障害は、肝臓への脂肪沈着(単純性脂肪肝)に始まり、脂肪性肝炎から線維化(肝線維症)へと進み、ついには肝硬変から肝臓がんに至る。NASHをはじめとしたNAFLDがとくに問題とされるのは、脂肪肝は肥満に伴いしばしばみられる所見であるが、ときに強い肝炎や線維化をきたし、自覚症状のないまま肝硬変に至っている場合があるためである。肝炎による線維化や脂肪沈着によって肝腫大(しゅだい)をきたしていることもある。
脂肪肝は検診受診者の20~30%、NASHを含むNAFLDは成人の約8%にみられ、肥満型のとくに中年女性に多いが、肥満でなくともみられることがあり、小児も例外ではない。ほかに脂質異常症による中性脂肪の上昇や糖尿病も原因としてあげられ、2型糖尿病患者のおよそ半分にNAFLDがみられるという報告もある。
食生活の改善と運動が治療の基本で、単純性脂肪肝の段階で治療や生活習慣の改善を開始すれば予後は良好であるが、線維化が進行した状態では肝機能の正常化を得られない場合がある。とくに進行性のNASHは線維化から肝硬変、さらには肝臓がんへ移行する可能性が高いため、日常的な健康管理がたいせつである。
現在は、超音波検査やCT検査により脂肪沈着の程度、肝腫大や線維化の程度を評価することができ、また肝生検によっても線維化の程度や肝硬変の有無を評価できる。また単純性脂肪肝やNASHはとくに肥満や脂肪代謝との関連が深いため、食生活に注意し、適度な運動を心がけることが予防につながる。
[渡邊清高 2019年11月20日]
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