電気器具で使われている充電式の電池に対し、充電に使う金属の接点部分に充電器やアダプターを直接接続することなく電力を供給すること。充電式電池を内蔵した電気器具を専用の装置に置いたり、近づけたりすることで充電することができる。非接触給電、無接点充電(給電)、ワイヤレス充電(給電)などともいう。金属の接点部分が外側に露出していないため、水にぬれやすい場所でも漏電の心配がなく安全に利用でき、ごみやほこりによる接触不良も防ぐことができる。電動歯ブラシやコードレス電話などの一部の電気器具で以前から使われてきた。非接触充電のおもな技術には、電流の大きさや送電側と受電側の距離などの違いから3種類の方式がある。(1)電磁誘導方式。10センチメートル程度までの近距離間で、およそ数ワット~50キロワットの電力を高い伝送効率で充電できる。ただし、送電と受電側の機器の位置や向きに制約を受けるデメリットがある。電動歯ブラシなどに用いられているもので、小型の機器の充電に適している。(2)磁気共鳴方式。数メートル程度の離れた比較的長い間隔で、数キロワット程度の充電をすることができる。間隔が大きくなると伝送効率は徐々に低くなるものの、送電側と受電側の間隔や位置、充電できる個数などの面で融通がきくので、小型の電子機器から電気自動車まで幅広い分野で実用化が期待されている技術である。(3)マイクロ波方式。数ギガワットといった大きな電力を数万キロメートル先まで伝送することができる。将来の人工衛星を使った宇宙太陽光発電に用いられる技術と目されている。
電子機器の非接触充電に関する国際標準化団体ワイヤレスパワーコンソーシアムWireless Power Consortium(WPC)は、電磁誘導方式をもとにした非接触充電の世界初の国際標準規格Qi(チー)を、2010年7月に策定した。これは、携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラといった、小型の電子機器用の低電力向け規格である。送信電力は最大5ワットで、受電する機器を固定位置に置くタイプと、送電パッドなどの上であれば自由な位置に置けるタイプの2種類に大別される。電磁誘導方式では受電する機器を置く位置や向きに制約を受けるが、このデメリットを解決するため、送電側のパッド内部に複数のコイルを敷き詰めるといった仕組みの改良が標準化にあたって盛り込まれている。2011年(平成23)にNTTドコモが携帯電話やスマートフォン用に採用した「おくだけ充電」は、Qi規格に準拠した非接触充電である。
[編集部]
(横田一輝 ICTディレクター / 2011年)
「ワイヤレス電力伝送」のページをご覧ください。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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