翻訳|phonetics
音声は人間の発音器官により発せられる音で,これを言語伝達のために用いるとき言語音声という。音声学は言語音声を記述する科学である。音声による言語の伝達には三つの局面がある。(1)話者が発音器官を用いて音声を発すると,(2)これは音波となって空中を伝播する。(3)この音波は聞き手の耳に達してその鼓膜を振動させ音声として認知される。この三つの局面に対応した音声学が成立する。つまり(1)話者がいかにして言語音声を発するかを生理的に分析する調音音声学articulatory phonetics,(2)言語音声を音波として物理的に分析する音響音声学acoustic phonetics,さらに(3)聞き手が音声音波をどのように聞き取るか心理的に分析する聴覚音声学auditory phoneticsの3分野に分かれる。(1)の調音音声学は調音活動の観察や実験を通し19世紀末からH.スウィート,ジーフェルスE.Sievers,O.イェスペルセンなどにより綿密に研究され科学として確立されるにいたった。(2)の音響音声学は以前からオシログラフのような器械を使用してきたが,第2次大戦中にスペクトログラフspectrograph(商標であるソナグラフの名が使われることがむしろ多い)という音響分析装置が開発されてから長足の進歩をとげた。(3)の聴覚音声学は主要な部門であるが研究は端緒についたばかりである。そこで調音音声学と音響音声学について概説する。
調音音声学はどのような言語音声がいかなる調音活動によって発せられるかを記述する部門である。それには発音器官とその機能を心得ておく必要がある。言語音声は呼吸により肺から出る息すなわち呼気を用いるのが普通であるが,まれに吸気を使うこともある。呼気は気管を通って口もしくは鼻から抜け出る。口は食物を摂取する器官であり,鼻と気管は呼吸のための器官である。これら器官のうち音声を発音するために利用する部分を発音器官という。
発音器官speech organは口腔,鼻腔,咽頭,喉頭に大別することができる。呼気はまず喉仏(のどぼとけ)のある喉頭を抜けて咽頭へ入り,ここから口腔もしくは鼻腔へ分かれて出ていく(図1参照)。ただし口腔と鼻腔の両方から同時に息を吐くこともできる。そこでこれら息が音声に変わる通路を声道という。いま声道を口腔から奥へ向かって配置された発音器官を順次確かめていくと,まず上顎に付着している上位調音器官として,上唇と上歯があり,これに続き歯茎がある。その後部から深くほれて湾曲した硬い部分を硬口蓋,次に軟らかな粘膜に覆われた部分を軟口蓋と呼ぶ。さらに軟口蓋の先は垂れ下がった突起状の口蓋垂となる。次に下顎に付着する下位調音器官として,まず下唇があり,次に伸縮自在な舌がある。舌の表面は次のように区分される。口を軽く結んで休止状態としたとき,前歯に触れている所を舌先tip,上の歯茎に触れている部分を舌端blade,硬口蓋に向かっている部分を前舌front,軟口蓋に対している部分を後舌backという。なお,前舌と後舌の中間を中舌centralと呼ぶことがある。また後舌の奥の舌の付け根を舌根という。音声を発するときは,上顎を固定し,下顎を上下に動かすので下位調音器官の方が積極的な器官と見なされる。ただし軟口蓋の後部は上下に移動して鼻腔への通路を開いたり閉じたりすることができる。
次にのどと呼ばれている部分は咽頭pharynxと喉頭larynxに分けられる。咽頭は口から胃へ通ずる食物の道と鼻から気管に及ぶ息の道が交差している個所である。そして気管の入口に当たる喉仏のところが喉頭に相当する。喉頭には声門glottisと称する息の関門がある。ここには声帯vocal cordsと呼ぶ2枚の弁があり,互いに接したり離れたりして,肺から流れ出る空気を遮断したり通過させたりする。こうした上位と下位の器官を用いて言語音声を発することを調音articulationと呼び,調音に参加する器官を調音器官articulatorという。
子音は肺から流れ出る空気を声道において妨害するとき発する音である。そこで子音は妨害を起こす位置と方法によって規定できる。一般に妨害の位置を調音の位置,妨害の方法を調音の方法という。
上位器官に下位器官が接近もしくは接触する位置につき表のような音声学的名称が定められている。
上下の器官が接触する場合が閉鎖で,(1)完全に接触するものに閉鎖音,破擦音,鼻音があり,(2)不完全に接触するものに流音がある。これは(a)断続的に繰返し接触する顫(せん)動音(ふるえ音)と(b)1回だけこするように接触する弾音(はじき音)に分かれる。また,(c)舌を上位器官に接触させ,舌の側面から息を流し出すものを側音という。
上下の器官が接近する場合は〈せばめ〉で,(1)摩擦する音を生ずるものを摩擦音といい,そのうちとくに,(a)気流が上歯に向けられて発するものが歯擦音,(b)そうでないものが非歯擦音である。なお(2)摩擦する音を生じなければ半母音となる。子音の分類にはさらに軟口蓋の位置と声帯振動についての記述が必要である。
軟口蓋が上がると,その後部が咽頭壁に密着し鼻腔への通路を閉じてしまう。したがって呼気はすべて口から抜け出るので,このとき発する音を口音oralという。これに対し,軟口蓋が下がると,その後部が咽頭壁から離れ鼻腔への通路が開く。そこで呼気は鼻へ抜け出ていく。このとき発する音が鼻音nasalである。
(1)声門にある2枚の声帯が接触し,空気の流れを遮断するとき声門閉鎖音[ʔ]が作られる。咳(せき)は声門閉鎖の一種である。(2)声帯が軽く接するとき,肺から吐き出される空気は声帯を押しのけて流出する。このとき声帯が振動し声を発する。声を伴う場合を有声voicedという。(3)声帯を少し離れた所まで接近させると,呼気は軽い摩擦音をたてる。これが声門摩擦音[h]となる。寒さにかじかんだ手のひらに息を吹きかけるときこの音が出る。(4)声帯を大きく引き離すと呼気はなんら妨げられることもなく声門を通って流れ出る。この状態を無声voicelessという。
子音はこの声帯振動の有無(有声か無声か)や先に述べた調音の位置,調音の方法によって規定される。例えば,[p]音は〈無声・両唇・閉鎖音〉と呼ばれる。ただしこれは口音に限る呼称であって,鼻音の場合は有声が普通であるから調音の位置だけ述べればよい。例えば[m]音は〈両唇鼻音〉と称する。
以下におもな子音について記述する。
(1)閉鎖音stop(図2参照) (a)無声両唇閉鎖音[p]は日本語〈パ〉の子音。有声両唇閉鎖音[b]は日本語〈バ〉の子音。(b)無声歯茎閉鎖音[vt]。日本語の〈タ〉の子音は舌端と歯茎で調音されるが,フランス語の[t]は舌先が前歯に触れている。有声歯茎閉鎖音[d]でも日本語の〈ダ〉の子音とフランス語の[d]は前述の要領に従う。(c)硬口蓋閉鎖音の無声[c]と有声[ɟ]では前舌と硬口蓋で閉鎖が作られる。ハンガリー語tyúk[cuːk]〈めんどり〉,maǵyar[maar]〈ハンガリー人〉。それぞれ〈チ〉〈ジ〉と聞こえる。(d)無声軟口蓋閉鎖音[k]は日本語の〈カ〉の子音。アラビア語では後舌を口蓋垂に接した口蓋垂閉鎖音[q]が用いられる。[qalb]〈心臓〉。有声軟口蓋閉鎖音[ɡ]は日本語の語頭の〈ガ〉の子音。有声口蓋垂閉鎖音は[G]。(e)声門閉鎖音[ʔ]は声帯を接合させて閉鎖を行う。ドイツ語では母音で始まる語の出初めに現れる。ein[ʔain]〈ひとつ〉。
(2)摩擦音fricative(図3参照) (a)無声両唇摩擦音[ɸ]は両方の唇を近づけて発する。日本語の〈フ〉[ɸ]の子音。有声両唇摩擦音[β]はスペイン語lobo[loβo]〈狼〉に見られる。
(b)無声唇歯摩擦音[f]と有声唇歯摩擦音[v]では,上歯を下唇に近づけ唇をかむようにして発する。英語のfive[fav]〈5〉。(c)無声歯摩擦音[θ]には,舌先を前歯の裏に押しあてる歯裏摩擦音と舌先を前歯の先につける歯間摩擦音とがある。英語のthing[θŋ]〈物〉は歯裏と歯間のどちらでもよい。有声歯摩擦音[ð]は英語のthis[ðs]〈これ〉に現れる。スペイン語のtodo[toðo]〈すべての〉は歯間音である。(d)無声歯茎摩擦音[s]。日本語の〈サ〉の子音では舌端を歯茎に近づけるが,フランス語のsac[sak]〈袋〉では舌先が門歯の裏につく。有声歯茎摩擦音[z]は[s]の有声音。(e)無声硬口蓋歯茎音[ʃ]は舌端を歯茎の後部に近づける。日本語の〈シ〉[ʃi]の子音では舌先が下がっている。ドイツ語のSchuh[ʃuː]〈くつ〉では唇が突き出される。有声硬口蓋歯茎摩擦音[ʒ]は英語のleisure[leʒə]〈ひま〉の語中に現れる。(f)無声硬口蓋摩擦音[ç]は硬口蓋に前舌を近づけて発する。日本語の〈ヒ〉[çi]の子音やドイツ語のich[ç]〈私〉に聞かれる。有声硬口蓋摩擦音[j]は英語year[jiə]〈年〉の語頭に現れる。(g)無声軟口蓋摩擦音[x]は[k]の位置で発せられる摩擦音で,ドイツ語のDach[dax]〈屋根〉やスペイン語のtajo[taxo]〈切る〉に使われている。有声軟口蓋摩擦音[ɣ]は[x]の有声音で,スペイン語のfuego[fueɣo]〈火〉の中に現れる。
(h)無声口蓋垂摩擦音[χ]は口蓋垂と後舌で摩擦音を出す。有声口蓋垂摩擦音[ʁ]は後舌を後方へ押し上げ口蓋垂との間で摩擦音を発する。フランス語のr音はこの型が多い。rouge[ʁuːʒ]〈赤い〉。
(i)咽頭摩擦音は舌根を咽頭壁に近づけて発音される。無声音[]と有声音[ʕ]はアラビア語の[a]と[ʕain]の文字に相当する音である。
(j)無声声門摩擦音[h]。日本語の〈ハ〉の子音で英語のhouse[ha⋃s]〈家〉の語頭音。この有声音[ɦ]は〈母〉[haɦa]の語中に聞かれることがある。
(3)鼻音(図4参照) (a)両唇鼻音[m]。両方の唇を閉じて軟口蓋を下げる。日本語の〈マ〉の子音。(b)歯茎鼻音[n]は舌先が舌端で歯茎を閉鎖し軟口蓋を下げる。日本語の〈ナ〉の子音。(c)硬口蓋鼻音[ɲ]は前舌を硬口蓋に接触させて軟口蓋を下げる。日本語の〈ニ〉[ɲi]の子音に近い。フランス語のsigne[siɲ]〈しるし〉。(d)軟口蓋鼻音[ŋ]は後舌と軟口蓋で閉鎖を作り軟口蓋の後部を下げる。日本語の鼻濁音〈ガ〉の子音で〈かぎ〉[kaŋi]や英語のking[kŋ]〈王〉に現れる。(e)口蓋垂鼻音[]では舌先を上げて後舌を後ろへ押しやり口蓋垂と接して閉鎖を作り軟口蓋の後部を下げる。日本語の撥音〈ン〉に相当する。〈金〉[ki]。
(4)流音liquid(図5参照) (a)歯茎側音lateral[l]は舌先を歯茎にあて舌の両側から息を流す。英語のlip[lp]〈唇〉。(b)硬口蓋側音[ʎ]は前舌と硬口蓋で側音を作る。スペイン語pello[peʎo]〈ひな鳥〉。(c)歯茎顫動音trill[r]は舌先を歯茎にあて数回震わす。スペイン語のperro[pero]〈犬〉。(d)歯茎弾音flap[]は舌先を1度だけ歯茎ではじく。スペイン語のpero[peo]〈しかし〉。英語の語中のr音sorry[s]〈気の毒な〉。(e)口蓋垂顫動音[R]は後舌を盛り上げて口蓋垂を振動させる。
(5)半母音semivowel (a)両唇軟口蓋半母音[w]は日本語の〈ワ〉[wa]の子音。英語wet[wet]〈ぬれた〉では唇の丸めが強く前へ突き出される。(b)非円唇硬口蓋半母音[j]。日本語の〈ヤ〉[ja]の子音。有声硬口蓋摩擦音よりも少し舌が低い。(c)円唇硬口蓋半母音[ч]は[j]の構えで唇を丸める。フランス語のnuit[nчi]〈夜〉。
(6)閉鎖 閉鎖音は上下の器官が接触する閉鎖の段階と,閉鎖の状態を維持して息をせき止め,口腔内の気圧を高める持続の段階,次に上下の器官を引き離し破裂音をたてる開放の段階からなる。ただし,この開放の仕方に三つの様式がある。
(a)有気音aspirated 閉鎖が開放されてから少し遅れて後続母音の声帯振動が始まるとき気音aspirationが生じる。この気音を伴うものを有気音(帯気音)といい音声記号の右肩に[‘]印をつける。英語では強勢母音の前の無声閉鎖音は有気となる。pen[p`en]。中国語でも[p`i]〈皮〉のように有気閉鎖音が用いられる。なお気音を伴わないものを無気音(無帯気音)と呼ぶ。
(b)破擦音affricate 閉鎖の開放がゆるやかに行われると摩擦音が生じる。このような閉鎖音と摩擦音のコンビを破擦音という。歯茎破擦音は,日本語の〈ツ〉[ts]の子音は無声,〈ズ〉[dz]の子音は有声の歯茎破擦音である。,硬口蓋歯茎破擦音は,日本語の〈チ〉[tʃi]の子音は無声,〈ジ〉[dʒi]の子音は有声の硬口蓋歯茎破擦音である。英語では,church[tʃəːtʃ]〈教会〉,judge[dʒʌdʒ]〈判事〉。このほかにドイツ語には両唇破擦音[pf]がある。Pferd[pfert]〈馬〉。
(c)無開放unreleased 閉鎖音が閉鎖と持続の段階だけで終わり,開放が行われないとき無開放閉鎖音となる。英語のact[æ°t]〈行為〉において,連続する閉鎖音では先行する閉鎖音は開放されない。また,タイ語の語末閉鎖音は無開放である。[lóp°]〈消す〉。
(7)二次調音 ある音声を発するため特定の上下の器官を接近もしくは接触させるにあたり,他の器官も同時にその調音に参加するとき,二次調音が生じる(図6参照)。
(a)硬口蓋化palatalized音 ある調音を行うと共に舌の本体を硬口蓋へ向かって盛り上げる。日本語の拗音は硬口蓋化子音である。直音〈カ〉[ka]の[k]と拗音〈キャ〉[a]の[]を比較すると,図6の初めの2図のようである。ロシア語ではこれを軟音と呼ぶ。MaTь[ma]〈母〉。
(b)軟口蓋化velarized音 ある調音を行うと共に舌の本体を軟口蓋へ向かって盛り上げる。英語の語末に立つ暗いl音は軟口蓋化側音[ɫ]である。kill[kɫ]〈殺す〉。ただし語頭では硬口蓋化されない明るいlを用いる。lip[lp]〈唇〉。
(c)そり舌音retroflex 舌先をそらしその裏を上位器官に接触もしくは接近させる。これは反舌音ともいう。そり舌歯茎閉鎖音は舌先の裏を歯茎後部に接する。無声[ʈ]と有声[ɖ]はスウェーデン語に見られる。fort[foʈ]〈早く〉,mord[moɖ]〈死〉。そり舌歯茎摩擦音は舌先の裏を歯茎後部に接近させる。歯擦音の無声[ʂ]と有声[ʐ]は中国語に現れる。[ʂə]〈社〉,[ʐen]〈人〉。舌先を上げ歯茎後部に近づける非歯擦音[ɹ]は英語の語頭のr音に用いられる。red[ɹed]〈赤い〉。この場合,摩擦がなく半母音に近いが,閉鎖音の後では摩擦音が聞こえる。tree[tɹiː]〈木〉。そり舌歯茎鼻音は[ɳ]。そり舌歯茎弾音は[ɽ]。舌先の裏を歯茎後部に1回だけこするようにはじく。日本語のラ行の子音にこのそり舌[ɽ]を用いる人が多い。
母音は肺からの空気が声道において妨害されて騒音をたてることなく口の中央を流れ出る音である。母音の音色は主として舌の形状によって決定されるため,舌の最高点を求め,その位置により母音を分類する方法がとられている。
(1)舌の上下の位置 舌面が口蓋に最も近づくものを高母音high(狭母音),最も離れているものを低母音low(広母音)とし,その中間を中母音midと呼ぶ。
(2)舌の前後の位置 舌の最高点が前よりのものを前舌母音front,後よりのものを後舌母音back,その中間を中舌母音centralとする。
(3)唇の形により,唇が丸められる円唇母音roundedと横に引きひろげられる非円唇unrounded母音とに区別される。
(4)軟口蓋の位置 軟口蓋が上がり鼻腔通路が閉じて,口からのみ息が出れば口母音,軟口蓋が下がり鼻腔通路が開いて,鼻からも息が出れば鼻母音となる。
(1)の上下の次元における高・中・低の3区分では不十分なので,それぞれをさらに二つに細分すると図7のような母音分類表が得られる。この表は正確な舌の位置を示すものではなく,音色の聴覚的印象により相対的に母音を配置したものである。
(1)非円唇母音 (a)前舌高母音[i]は日本語の〈イ〉に近い。(b)前舌低め高母音[]は日本語の〈イ〉よりやや低く後寄りで英語pin[pn]の短母音に相当する。(c)前舌高めの中母音[e](狭いe)は日本語の〈エ〉に近い。(d)前舌低め中母音[ɛ](広いe)。日本語の〈エ〉より低い。フランス語のbec[bɛk]〈くちばし〉。(e)前舌高め低母音[æ]。日本語の〈ア〉と〈エ〉の中間で後寄り。英語のcat[kæt]〈ねこ〉。(f)前舌低母音[a]は日本語の〈ア〉より前寄り。フランス語patte[pat]〈足〉。(g)後舌高母音[]。日本語〈ウ〉は少し前寄り。(h)後舌低め中母音[ʌ]。英語の[ʌ]はかなり前寄りで発音される。cut[kʌt]〈切る〉。(i)後舌低母音[ɑ]は口の奥で発せられる。アメリカ英語のhot[hɑt]〈あつい〉。(j)中舌高母音[ɨ]は[i]の構えで舌を後方へ引く。ロシア語のязык[jəzɨk]〈舌〉。(k)中舌高め中母音[ə]は英語のあいまい母音に相当する。aloud[əla⋃d]〈大声で〉。
(2)円唇母音 (a)前舌高母音[y]は[i]の構えで唇を丸める。ドイツ語Tür[tyːr]〈戸〉,フランス語lune[lyn]〈月〉。(b)前舌高め中母音[ɸ]は[e]の構えで唇を丸める。ドイツ語schön[ʃɸːn]〈美しい〉,フランス語feu[fɸ]〈火〉。(c)前舌低め中母音[œ]は[ɛ]の構えで唇を丸める。フランス語cœur[kœʁ]〈心〉。
(d)後舌高母音[u]は日本語の〈ウ〉と違い唇を丸めて舌を後方へ引く。英語pool[puːɨ]〈プール〉,ドイツ語Mut[muːt]〈気分〉。(e)後舌低め低高母音[⋃]は[u]よりもやや低く前寄り。英語のput[p⋃t]〈置く〉の短母音。(f)後舌高め中母音(狭いo)[o]は日本語の〈オ〉。フランス語beau[bo]〈美しい〉の母音。(g)後舌低め中母音(広いo)[ɔ]は日本語の〈オ〉よりも舌が低い。フランス語note[nɔt]〈注〉。(h)後舌低母音[]は[ɑ]の構えで唇を丸める。イギリス英語hot[ht]。(i)中舌高母音[ʉ]は唇を強く前へ突き出す。ノルウェー語hus[hʉs]〈家〉。
(3)基本母音 母音の調音における舌の動きを観察すると,前舌母音では高から低へ[i]→[e]→[ɛ]→[a]の順に口が開き,舌が斜めに下がっていく。これに対し後舌母音では,[u]→[o]→[ɔ]→[ɑ]の順に舌が下がっていく。このためイギリスの音声学者D.ジョーンズは図8のような母音四角形を提示している。これによると前舌母音系列は[i]と[a]の間が[e]と[ɛ]で3等分され,後舌母音系列では[u]と[ɑ]の間が[o]と[ɔ]で3等分されている。このように配置された母音を基本母音という。
(4)鼻母音 前述の母音の構えで軟口蓋を下げ,鼻と口の両方から息を出すと鼻母音となる。フランス語には4種の鼻母音がある。pain[p]〈パン〉の[](~は鼻音化の符号),un[]〈ひとつ〉の[],bon[b]の[],blanc[blã]〈白い〉の[ã]。
(5)無声母音 母音は通例,有声であるが,場合により無声となることもある。日本語では,無声の閉鎖音と摩擦音にはさまれた高母音の[i]と[]は無声化することがある。クシ[kʃi]では[]が,シカ[ʃı°ka]では[ı°]が無声化している(°と°は無声化の符号)。
(6)そり舌母音 ある母音を調音しながら舌先を上げるとそり舌母音となる(図9参照)。アメリカ英語によく用いられる。(a)[]は[ə]の構えで舌先だけ軽く上げる。bird[bːd]〈鳥〉。(b)[]は[ɔ]の構えで舌先を軽く上げる。court[kːt]〈法廷〉。(c)[]は[ɑ]の構えで舌先を軽くそり上げる。cart[kːt]〈車〉。
(7)二重母音 舌がある母音から出発し他の母音へ向かって移動しながら1音節を構成するものを二重母音diphthongという。例えば,英語のI[a]〈私〉では,舌が[a]の構えから高母音[]へ向かって移っていくが,[]の手前で調音を終えてしまう(図10参照)。これに対し日本語のアイでは,舌の構えは[a]から[i]に変わり2音節に数えられる。つまり母音の連続であるから連母音という。英語では,[e][a][a⋃][ɔ][o⋃]のように高母音[]と[⋃]へ向かう二重母音が用いられる。ただし,イギリスでは[o⋃]は[ə⋃]と発音される傾向がある。go[ɡo⋃]→[ɡə⋃]〈行く〉。ドイツ語には[a][a⋃]のほかに円唇の二重母音[ɔ]がある。
言語音声の強さ,高さ,長さをまとめて韻律的特徴prosodic featuresという。(1)強さアクセント(強弱アクセント),あるいは強勢stressは音声を発する相対的な息の強さによる。英語では強勢に強[]と弱の別があり,その位置が自由に移動して語の意味を区別する。below[blo⋃]〈下〉,とbillow[blo⋃]〈大波〉。また,やや強い副強勢[]が現れることもある。examination[ɡzæməneʃən]〈試験〉。強勢がある位置に固定している言語もある。チェコ語では常に語の第1音節に強勢がくる。
(2)音の高さに相対的な区別や変化がある場合に高さアクセント(高低アクセント)pitchが認められる。日本語では,橋[haʃi]と箸[haʃi]のように高さアクセントの位置の違いが語の意味を区別する。高さアクセントの変動が音節と結びつくとき声調toneとなる。タイ語には,高[mái]〈木〉,中[mai]〈マイル〉,低[mài]〈新しい〉と3段の高さがあり,さらに上昇[mǎi]〈蚕〉と下降[mâi]〈燃える〉の別がある。前の三つの例のようにある一定の高さをもつものを音位声調,後の二つの例のように高さが上下の方向に移動するものを変位声調という。中国語は上[ma]〈媽〉と共に上昇[ma]〈麻〉と下降[ma]〈〉それに下降上昇[ma]〈馬〉の四声をもつ。
(3)音の長さは,長を[ː],半長を[]の記号で表す。英語では,有声子音の前の母音は無声子音の前の母音よりも長い。beat[bit]〈打つ〉とbead[biːd]〈じゅず玉〉。フィンランド語では,母音と子音の両方に長さの対立が見られる。tuli[tuli]〈火〉とtuuli[tuːli]〈風〉,kuka[kuka]〈だれ〉とkukka[kukːa]〈花〉。
声帯の振動により,肺から流れ出る空気は細かく切断される。この刻み方が細かいほど高い音となる。このような声帯振動の早さによる音の高さのほかに母音は2種類の固有の高さをもっている。音声をスペクトログラフ(ソナグラフ)にかけると,これらの高さは横縞となってフィルム(スペクトログラム)に写し出されるが,この縞をフォルマント(略称F)と呼ぶ(図11参照)。そして周波数の低いものから順次,第1,第2,第3フォルマントと名づける。
普通,第1フォルマントは[i]→[ɛ]→[ɑ]の順に高くなり,[ɑ]-[ɔ]-[u]の順に下がっていく。これに対し第2フォルマントは[i]→[ɛ]→[ɑ]→[ɔ]→[u]の順に下降する(図12参照)。われわれはこの二つのフォルマントの分布の仕方により音声として母音を聞き取るのである。第1フォルマントは舌の上下の高さに対応するが,フォルマントの低いものほど舌の位置は逆に高くなる。また第1フォルマントと第2フォルマントとの間の距離が舌の前後の位置を指す。その距離が大きいものほど前よりの母音となる。いま英語の母音におけるフォルマントの標準的数値に従って計算し,第1Fと第2Fとの距離の値を横軸に,第1Fの値を縦軸にとって逆比例のグラフを作ると図12のグラフとなる。調音音声学の母音四角形に似た配列が得られる。
子音はその前後にくる母音のフォルマントの始めと終りに現れるゆがみにより認定される。図13の英語の[bæb],[dæd],[ɡæɡ]のスペクトログラムを見ると,各語の前後にある空白は閉鎖により音声がとぎれていることを示す。[b]音では第1と第2フォルマントの出始めと終りが下がっている。[d]音では第2フォルマントが1700ヘルツあたりを指している。[ɡ]音では第2と第3フォルマントの出始めが下がり,終りで交差している。これは前と後の[ɡ]音の調音点が異なることを示唆している。摩擦音はかすれの広がり方により,鼻音や側音は特有の薄いフォルマントの分布の型により見分けることができる。
このように言語音声をフォルマントに分析するばかりでなく,スペクトログラムにフォルマントを書きこみ,器械を逆に操作して人工音声を合成することも可能である。最近ではこうした合成音声を被験者に聞かせ,どのように聞き取るかを調べる知覚音声学が発達してきた。
→音韻論 →音声記号 →声
執筆者:小泉 保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
語原的にはギリシア語のφων(音)と、科学一般を意味する接尾辞からなる術語で、音声、すなわち人類がコミュニケーションの手段として用いている言語音を、自然科学的に研究しようとする経験科学の一つである。
言語音の産出から受容に至る過程は、おおむね、(1)話者が口、鼻、のどなどのいわゆる音声器官organs of speechによって言語音を産出する過程、(2)音波として空気中を伝播(でんぱ)する過程、(3)聴者の聴覚器官によって聴き取られ認知される過程、の3種に分類される。
したがって、研究分野もこれらに対応して、〔1〕生理(または調音)音声学physiological or articulatory phonetics、〔2〕音響音声学acoustic phonetics、〔3〕聴覚音声学auditory phoneticsの3分野に分けられる。
〔1〕生理音声学は、当該言語体系内において用いられている言語音を産出するためには、音声器官のどの部位をどのように運動させるのかという点を研究するもので、一例を示せば、
のような差異が追究されることになる。ただしエレクトロ・パラトグラフィーなどをはじめとする種々の機器が開発されたおかげで、ただ単に音声器官の調音位置を静的なものとして押さえるだけでなく、時々刻々と変動する調音運動自体を動的に捕捉することも盛んに行われており、数々の研究成果をあげつつある。〔2〕音響音声学は、もっぱら言語音の音響学的側面を追究する分野であるが、第二次世界大戦後、種々さまざまな機器が開発されたおかげで、長足の進歩を遂げた。なかでももっとも利用度の高いのは
に示したサウンド・スペクトログラムで、これによれば、言語音の周波数と振幅分布がきわめて短時間に分析できる。さらに記録図上の縞目(しまめ)と濃淡分布のゲシタルトは、単に言語音の弁別に役だつだけでなく、個人差の識別にも有意であることが判明したため、わが国でも「吉展(よしのぶ)ちゃん」事件を契機に、科学警察研究所などの注目するところとなり、現在では指紋に匹敵する声の個人的特徴という意味で「声紋」とよばれ、犯罪捜査の参考にも利用されている。一方、コンピュータの進歩は、所与のデータを単に受動的に分析するだけでなく、逆に予見されるエレメントを人為的に組み合わせた合成音を併用するAnalysis by Synthesis(A-b-Sと略称する)の手法を生んだ。A-b-S法の原理は、合成→比較→制御という形で、仮説としてたてられた生成モデルによる合成音(出力)と分析資料(入力)を比較し、その際に生ずる差異に基づいて、生成モデルの主要パラメーターを制御するといったフィードバック過程の反復によって、真理に迫ろうとするものである。近年、音声による荷物の自動仕分けや、しゃべったとおりに文字を打つ装置などが開発されているが、これらはいずれも前述の研究成果を踏まえた音声認識装置によっている。今後、いながらにしてしゃべるだけでドアが開き、テレビのスイッチやチャンネルの切り替えができるなど、体の不自由な人たちにとっても、この分野の発展は計り知れない恩恵をもたらすことが期待される。〔3〕聴覚音声学は、音声学のなかではもっとも後れた分野であるが、スペクトログラムなどを併用した聴取実験が盛んに行われており、たとえば、閉鎖の解除と声帯振動開始時とのギャップに注目して求められたVOT(Voice Onset Time)値を用いて、生後1か月を経過すれば[ba]と[pa]が弁別できるとするアメリカの研究成果などがあげられている。
[城生佰太郎]
大別すると、主観的(または聴覚的)方法と客観的(または器械的)方法とがある。前者は、自己の調音を詳細に内省して、音声器官の運動を確かめると同時に、耳を練磨することによって、他人の調音も正確に把握するよう努力する方法で、観察に際しては耳のほかに目も同時に働かせる必要がある。後者は、種々の機器を用いて瞬間的な音声を記録する方法で、音響的側面からの分析や合成、ならびに生理的側面からの種々さまざまな動的研究を含む。この方法は、日進月歩の機器開発によって、今後ますます進展が予測されるが、装置の利用には時間的、空間的、経済的制約が大であることを思えば、音声学を志す者は、まず主観的方法を修めたうえで、客観的方法も併用できるよう心がけることが望ましい。そのためには、なによりも、瞬間的に変動してしまう動的現象である音声を記述する方法としての音声記号を身につけなければならない。
[城生佰太郎]
文字言語で文、節、句、単語などの単位が区別されているのと同様、音声言語でもおよそ
に示すような階層構造をなすものとして、いくつかの単位が仮定されている。いま、時間軸に沿って順次遂行されていく音声に、何らかの切れ目をつける単位を「分節上の単位」、逆に一続きの音塊内でこれに対する高低、強弱、長短など種々さまざまなデフォルメ(変形)を与える要素を「韻律上の単位」と仮定すれば、分節上最大の単位は、呼気の流れにしっかりとした切れ目をつける①となる。ただし呼気流の中断は、単なる生理的必然――すなわち息切れなど――によっても生ずるので、事実上その規模は最小限唯一の単音から、最大限息の続く限りまで存在することになってしまい、甚だ不明瞭(ふめいりょう)である。そこで「切れ目」ということばを、「ノーマルな文体における自然な休息」と定義して、これを書き取りとか言いよどみの訂正などのように、特殊な意図のもとに加えられた「休止」(後述③参照)と区別する。さらに切れ目にも、ごく大ざっぱにみれば大きな切れ目と小さな切れ目がありうるので、前者を「間合い」、後者を「句切り」と名づけて、これらも区別することとする。なお「間合い」と「句切り」は、多くの場合切れ目の持続時間と一致するかにみえるが、両者の本質的差異はむしろ次の発話を準備する体勢をとっているか否かの点にある。すなわちたとえどんなに切れ目が永続しようとも発話の中途にあって、次の準備体勢をとっていると解釈されるものは「句切り」とよんで、後述する②に属するものとみなす。反対に発話に対するいちおうの完了体勢にある切れ目は、長さと無関係に「間合い」とよび、①のレベルにかかるものとみる。一方、韻律上のレベルではイントネーションがこの単位に加わるものと考えられる。②は分節上、呼気流に「小さな」切れ目をつける機能を有するもので、前述した「句切り」、すなわち次の発話の準備体勢を有する切れ目が置かれる単位である。従来は一般に強め段落(stress group)とよばれてきたが、日本語などをはじめとした、強さアクセントをもたない言語には不適当な名称なので筆者はここに示した術語を提唱している。なお、①との相違を、間合い→(B)、句切り→(A)のように記号化して具体的に示せば次のようになる。
(夏目漱石『夢十夜』より)
お前は侍である。(A)侍なら悟れぬ筈(はず)はなからうと和尚(おしょう)が云つた。(B)…中略…口惜しければ悟つた證據(しょうこ)を持つて來いと云つてぷいと向(むこう)をむいた。(A)怪(け)しからん。(B)
以上の例から明らかなように、「間合い」や「句切り」はかならずしも句読点符号と一致するとは限らない。一方、韻律上のレベルではアクセント節や引伸しなどが置かれうる単位である。アクセント節とは「箸(はし)」に対する「箸が」、「音声学」に対する「音声学こそが」のように、アクセントを担った音節を核として、前後に相対的見地から、何らかの意味で劣勢な音節が連続した際に生ずるひとまとまりをさす概念で、文法論上の「文節」に対応するアクセント論上の単位である。また、引伸しとは、
ズット / ズーット
ナガイ間 / ナガーイ間
ウソ / ウッソ~~
などの各組における後者のようなものをさす。③は分節上、文句をわざわざ短くくぎったり、ゆっくりしたていねいな発音、書き取りなどを行う際に必要とされる単位で、まとまった意味を壊さないための最小限度という意味において意義段落と称される。したがってここに生ずる跡切れを、筆者は特殊な意図のもとに加えられた不自然な跡切れと解釈し、「休止」とよぶこととする。なお前記のような定義を与えた関係上、休止そのものの持続時間は問わないことになる。一方、韻律上のレベルではプロミネンス(卓立)が置かれうる。プロミネンスとは、
私が欲しいのは名誉でも財産でもありません。アナタなんですよ。
におけるアナタのように、強さ、高さ、緊張などの総和を一般にさす。ただしマイナスのプロミネンスといって、そこだけ他よりもトーンを落とすことによって効果をあげる場合もある。④音節は、単音(または単音連続)が形成する、あるまとまりに対して付与された単位で、たとえば日本語で俳句をつくるときに五、七、五というように、だれにでも簡単に取り出せる日常茶飯的レベルの「音韻論的音節」と、生理的・音響的・聴覚的側面を総動員しても、なおかつ学者間で意見がまとまらない「音声学的音節」の2種が区別される。なお通常、アクセントの「頂点」はこのレベルに存在している。⑤単音は、音声学で仮定される最小単位で、個々の母音、子音などに該当する。ただし、以上に仮定した諸単位は、いずれも音韻論に支えられてこそ初めてその効果を余すところなく発揮することが少なくない。したがって、音声学と音韻論は互いに密接不可分な、同一紙面の表裏のような関係にあるということになる。
[城生佰太郎]
音声に対する人類の関心はきわめて歴史が長く、最古の記録としては紀元前2000年ごろにエジプトですでに、吃音(きつおん)や発音の誤りに関する指摘をした文献が残されている。また『旧約聖書』(「イザヤ書」32章4節)にも演説をする際の発音法などについての記述がある。さらに前4世紀には古代インドで調音面に関する研究が行われていたが、19世紀にこれがヨーロッパに紹介されるまでは、瞠目(どうもく)すべき発展をみることはなかった。近代音声学はサンスクリットの発見に基づく比較言語学の発達によって地盤が築かれ、19世紀中葉のドイツで開花した。その後、生理・物理両面での研究、国際音声学協会による国際音声記号の制定などを経て、1920年代には強力な理論的支えである音韻論を発達させた。第二次世界大戦中アメリカで発明されたサウンド・スペクトログラフは、言語音の音響学的研究を促進し、さらに近年におけるコンピュータの進歩と種々さまざまな機器の発達は、音響面および生理面にきわめて精度の高い研究を可能ならしめている。これらの状況から、今後もっとも発展が期待されるのは、聴覚面における研究である。わが国では1926年(大正15)に音声学協会(49年に日本音声学会と改称)が創立されたのを初めとして、今日では日本音響学会、日本音声言語医学会などが立ち並び、盛んに研究が進められている。
[城生佰太郎]
『服部四郎著『音声学』(1984・岩波書店)』▽『城生佰太郎講・著、金田一春彦監修『音声学』(1982・アポロン音楽工業社)』▽『藤村靖編著、大泉充郎監修『音声科学』(1972・東京大学出版会)』▽『比企静雄編『音声情報処理』(1973・東京大学出版会)』
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