大きな室内において音源の音が停止したのち、しばらくの間、聞こえる連続的な反射音。これはさまざまな経路を通って到達してくる、壁などでの反射音が重なり合ったものである。反射の際そのエネルギーの一部が吸収されるため、残響の強さは一般に指数関数的に減衰し、最後には消滅する。したがってその音圧レベルは の(1)のように時間とともに直線的に下降する。ただし、複雑な音響特性の室では の(2)のようにこの直線が折れ曲がることもある。
[比企能夫]
音源が止まったときから計り、残響音のエネルギーが最初の値の100万分の1になるまでの時間を残響時間という。残響時間Tを与える式は建築音響学の創始者セービンPaul Earls Sabine(1879―1958)によって最初に実験的に求められ、
T=0.161V/αS
と表された。ここでV(立方メートル)は室の体積、S(平方メートル)は壁の面積、αは壁の平均の吸音率(音のエネルギーの吸収される割合)である。ただし、ホールなどの場合、αは座席の材質や、聴衆の数によっても変わってくる。最近では、もっと多くの要素を考慮した残響時間の式がいくつか提案されている。適当と考えられる残響時間はそのホールの使用目的によっても異なり、音楽の場合1.5~2.5秒程度、講演では1.0~1.5秒程度とされている。
[比企能夫]
『前川純一著『建築音響』(1978・共立出版)』▽『チャールズ・テイラー著、佐竹淳・林大訳『音の不思議をさぐる――音楽と楽器の科学』(1998・大月書店)』▽『ハインリッヒ・クットルフ著、藤原恭司・日高孝之訳『室内音響学――建築の響きとその理論』(2003・市ヶ谷出版社)』
室内などの閉空間で音を出すと,それを止めた後にも響きが残る。これを残響といい,音源から放射された音が壁,天井,床などで何度も反射を繰り返しながら徐々に減衰するために生ずる。音楽などが余韻を伴って潤い豊かに聞こえるためには適度の残響が必要であり,コンサートホールや劇場などは,それぞれの用途に適した残響が生ずるように作られている。残響の程度は一般に残響時間で表される。この量は,室内に一定の強さの音を出し,定常状態に達してからそれを止め,室内の音のエネルギー密度が定常状態のときに比べて1/106(60dB)に減衰するまでの時間をいい,室容積,周壁の材料の吸音率,室内の家具類や人間の吸音力から計算することができる。一般的なホールの残響時間は,500Hzで1~2秒程度である。
→音響設計
執筆者:橘 秀樹
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…室内音響では,これを反響と名付け,音源から直接に到来した音波に対し,それと聴感上区別できるような時間遅れをもつ反射音波をいう。反響に対し,音が室内の壁や天井,床などで反射を繰り返し全体に響く響きを残響という。しかし,用語の上で両者は混用されており,残響をエコーと俗称することが多い。…
※「残響」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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