風向計の一種。元来ヨーロッパで考案されたもので、日本に伝えられたのは比較的新しい。風の吹く方向を知る道具だが、このたぐいのものとしてはもっとも原始的な形態である。最新式の風向計は、単に風向だけではなく、風力もあわせて測定できるようになっており、気象台や船舶などで用いられている。これに対し、風見は風向が知られるのみで、一般家庭などでも用いられ、もっぱらアクセサリー的要素の強いものとなっている。しかし、かつては風向を知るのみではなく、ここにその家の紋章をつけ、外部に対して家格を示す役割をも果たしていた。形態はさまざまだが、旗、矢、雄鶏(おんどり)をかたどったものがよくみられる。
[胡桃沢勘司]
とくに、雄鶏形のものは風見鶏(かざみどり)weathercockとよばれ、もっともなじみ深いものといえよう。その由来は古く9世紀にさかのぼり、当時のローマ教皇が法令で教会の塔の先端に風見を取り付けるよう定めた際、雄鶏形のものを用いたことによるといわれている。教会でことさら雄鶏形が用いられたことには、2通りの解釈がなされている。第一は聖書の「ルカ伝」の記述に拠(よ)るもので、ペテロがキリストが捕らえられた際、うその告白をしたのを雄鶏の鳴き声に刺激されて改めたからというもの。第二は民間信仰に基づくもので、雄鶏は警戒心が強く、夜の悪魔を追い払う力があると信じられているからというものである。なお、風見鶏は頭が風の吹いてくる方向を向くようにつくられている。
[胡桃沢勘司]
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