〈風見〉ともいう。英語のvane(風見の総称)は古代英語のfana(旗)が語源で,旗印を立てて風の方向を知るとともに,その旗印の紋章で家柄を示したことを表している。風見の最も古い記録は,ギリシアの天文学者キュロスのアンドロニコスがアテナイにつくった,〈風の塔〉と呼ばれた大理石の八角塔の頂上につけられたもので,銅製のトリトン(半人半魚の海神)の像が風にしたがって向きを変え,手にした杖(つえ)でその像に吹いている風の方向をさすようになっていた。ヨーロッパで教会の尖塔の先端に風見をつける風習は,9世紀の半ばに教皇の法令で定められたといわれ,それ以後13世紀ころにかけての種々の文献に現れている。教会には雄鶏(おんどり)の形をしたものが用いられたので,風見鶏weathercockという名前が一般化した。教会の風見は,キリストが捕らえられたとき,ペテロは3度自分とキリストとの関係を否認したが,雄鶏の力強い鳴声で自己の誤りにめざめた(《ルカ伝》22の54~62)ことになぞらえ,僧職者はペテロを覚醒(かくせい)させた雄鶏のように力強く人々をめざめさせ,教会に集わさせねばならないことを表していた。ただしこれには異説があって,雄鶏は警戒心が強いので東方では夜の悪魔を追い払う力があると信じられ,その民俗がギリシア,ローマに伝わったので,十字架よりもさらに有効に悪魔を追い払う力があると信じられていたことを表していたという見方もある。初期の教会は,東から西に向かって建てられ,聖壇はその東端につくられていたので,風見のさす方向は建物と対照することによって知ることができた。風見のデザインには,雄鶏だけでなく,紋章や怪奇動物,あるいは装飾的なものも見られる。
→風向計
執筆者:春山 行夫
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