日本大百科全書(ニッポニカ) 「風車(玩具)」の意味・わかりやすい解説
風車(玩具)
かざぐるま
紙、経木(きょうぎ)、セルロイドなどでつくった車輪形のものを柄(え)の先につけ、風力で回転させる玩具(がんぐ)。古くは紙製で、中国から渡来し、平安時代には子供の遊び道具になっていた。室町時代には起きあがり小法師(こぼし)や手毬(てまり)などとともに、子供の玩具として親しまれていたことが、当時の小舞(こまい)の文句の一節などでもうかがわれる。江戸時代に入ると新春の玩具となった。1686年(貞享3)刊の『雍州府志(ようしゅうふし)』(黒川道佑(どうゆう)著)には、「京の祇園(ぎおん)町製がもとで春の初めに多くつくられる。細い竹片で小さな花輪をつくり、青紅色の紙片を花弁のように張り付ける。風が当たると花輪が転舞するので風車という。藁(わら)台に立てて売る」という意味のことを記している。
江戸中期から末期にかけては、江戸・雑司ヶ谷(ぞうしがや)鬼子母神(きしもじん)の参詣土産(さんけいみやげ)として広く知られた。五色紙製のもので、この系統の紙風車には、現在、福島県会津若松市、宮城県気仙沼(けせんぬま)市唐桑(からくわ)町のものがある。愛知県豊橋(とよはし)市郊外の小坂井菟足(うたり)神社の祭礼では、経木製の風車が売られる。いずれも信仰縁起にちなんだ郷土玩具として知られている。明治以後はセルロイド製のものが進出し、なかにはガラス玉をつけたもの、風で鈴が鳴ったり、房がついているものなど、さまざまな種類がみられる。ヨーロッパでも17世紀の絵画に子供がこれを持って走り遊ぶ姿がみられる。現在は、従来の紙製、セルロイド製にかわりプラスチック製のものが多く、乳幼児用として親しまれている。
[斎藤良輔]