ポルダー(読み)ぽるだー(英語表記)polder オランダ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポルダー」の意味・わかりやすい解説

ポルダー
ぽるだー
polder オランダ語

低湿地堤防で囲み、内部を排水して造成したオランダ干拓地の総称。厳密には、干潟干拓した海面ポルダー、泥炭の堆積した低湿地を排水した泥炭地ポルダー、泥炭地域の湖沼そのものを干拓した湖沼ポルダーの3タイプに区分される。北東部のワッデン海沿岸や南西部のデルタ地帯ではローマ時代から海面ポルダーの造成がみられ、また中央部のホラント地方の砂丘背後では中世から泥炭地が開発されていた。これらに対し、湖沼ポルダーはオランダの黄金時代である17世紀になって造成が進展した。海面低下や資本蓄積、また大型風車と多段揚水という技術革新が湖沼干拓を推進したのであり、アムステルダム北方で34の大規模湖沼ポルダーが誕生した。

 その後、風車から蒸気ポンプへ、さらに電気ポンプへと排水技術が向上し、1918年には最大のゾイデル海干拓が着手された。湾口の大締切堤防は1932年に完成し、ライン川の水を注入することで淡水アイセル湖に変化した。湖中には五つの巨大ポルダーが計画され、ウィーリンガー湖ポルダー(2万ヘクタール)、北東ポルダー(4万8000ヘクタール)、東フレボラント(5万4000ヘクタール)、南フレボラント(4万3000ヘクタール)と順次完成したが、最後のマルカーワールトに関しては、築堤はされたものの、環境意識の高まりから干拓事業は凍結されている。

 ポルダー内は一般に地下水位が高く低湿なため、放牧地採草地としての利用が卓越して酪農が主産業となるが、一部の排水良好地では畑作花卉(かき)・野菜の園芸農業も営まれてきた。しかし1970年代以降は、産業構造の変化や都市域の拡大などから、住宅・工業用地、また森林・レクリエーション用地など非農業的利用の比重が高まっている。

[長谷川孝治]

『勝井規和写真、勝井悦子文『オランダ・ベルギー物語』(1989・グラフィック社)』『香山寿夫監修、石田寿一著『低地オランダ――帯状発展する建築・都市・ランドスケープ』(1998・丸善)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポルダー」の意味・わかりやすい解説

ポルダー
polder

低湿地を干拓してつくりだした陸地。一般にオランダ北部や西部およびベルギー北部の干拓地をさす。特にオランダのゾイデル海の干拓は有名。 12世紀頃から沼沢地や浅海を干拓して耕地化が続けられてきた。 1891年 C.レリーの計画に基づき,1920年以来大規模な工事が行われている。 32年には堤防を構築して海水侵入を防ぎ,淡水のアイセル湖が出現。さらにその大半がポルダー化され,牧畜や穀物栽培などに利用されている。

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