マスウーディー(その他表記)al-Mas`ūdī

改訂新版 世界大百科事典 「マスウーディー」の意味・わかりやすい解説

マスウーディー
al-Mas`ūdī
生没年:896ころ-956

バグダード生れの著名な学者。彼の学問的態度は,当時の多くのイスラム知識人と同様,自然現象,地理,歴史,部族,動物,植物,鉱物などの,いわば大宇宙の森羅万象の諸現象について,その具体的なあり方と多彩で有機的な様態を解明することにあった。したがって,彼は若いころからインド洋周辺の諸地域,シリアエジプトなどを広く巡り,自らの観察と経験を積み,収集した膨大な資料をもとに,30巻に及ぶ大百科全書時代の情報Akhbār al-zamān》を著した。現存する書は,この抄録・要約本といわれる《黄金牧場宝石鉱山Murūj al-dhahab wama`ādin al-jawāhir》である。また晩年には《提言再考の書》を著して,彼の学問体系を簡潔に整理した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マスウーディー」の意味・わかりやすい解説

マスウーディー
ますうーでぃー
Mas‘ūdī
(896ころ―956)

アラブ歴史家地理学者。バグダードの名家に生まれる。若くしてイラン、インド、スリランカザンジバルを周遊し、知見を広めた。主著『時代の情報』Akhbār al-Zamānは、天地創造より、彼の時代に至る百科全書的な大世界史で、30巻よりなっていたというが、一部を除いて散逸した。これを要約したのが『黄金の牧場と宝石の鉱山』Murūj al-zahab wa ma‘ādin al-jawharで、アッバース朝史や、中央アジアのトルコ系諸民族史、非イスラム世界の地誌に関する重要な史料となっている。『訂正と監督の書』Kitāb al-tanbīh wa al-ishrāfも大部分が散逸したが、初期イスラム時代の名士列伝の部分が刊行されている。

[清水宏祐]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マスウーディー」の意味・わかりやすい解説

マスウーディー
al-Mas`ūdī, Abū al-Ḥasan `Alī

[生]? バグダード
[没]956頃.フスタート
アラブの歴史・地理学者。若い頃からイラン,インド,スリランカ,シナ海方面,東アフリカ,アラビア,シリアなどを旅行し,イスラム諸学のほかギリシア哲学や科学に詳しく,人間社会と自然とに飽くことのない好奇の目を注いだ。 30巻の大世界史『時代の報道』 Akhbār al-Zamānは1巻以外未発見で,『中間の書』 Kitāb al-Awsaṭも散逸しているが,これらを要約した『黄金の牧場』 Murūj al-Dhahab (947) と,晩年にその生涯の著作を要約し,新資料をも加えた『警告と助言の書』 Kitāb al-Tanbīh wa al-Ishrāfとが現在も読まれている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「マスウーディー」の解説

マスウーディー
al-Mas‘ūdī

?~956

バグダード生まれのムスリムの歴史家,地理学者。広くイスラーム世界を旅行し,大著『時代の情報』を著したが,すでに散逸した。『黄金の牧場』はその抜粋,『警告と改訂の書』はその補遺ならびに索引である。

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百科事典マイペディア 「マスウーディー」の意味・わかりやすい解説

マスウーディー

バグダッド生れの旅行家で地理学者,歴史家でもある。名門の出身で,イスラム世界の東西にわたる大旅行をし,見聞・資料をまとめた30巻の大著を書いた。その概要を《黄金の牧場と宝石の鉱山》として出版。

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世界大百科事典(旧版)内のマスウーディーの言及

【技術史】より

…したがって技術史も,美的評価にもとづく優れた建築家や工芸家の伝記や,様式の変遷史が中心であった。しかし広い版図を支配したイスラム圏では伝統の異なる珍しいものが関心をひき,とくに地歴書(たとえば,マスウーディーの《黄金の牧場と宝石の山》)には各地の技術の様式や特色が記載されている。 近世に入ると技術は急速に発達したので,新技術への注目や技術史への関心が芽生えた。…

【百科事典】より

…その知識は単に書記学の範囲にとどまらず,地誌,行政,自然科学,歴史にまで及んでいることが特徴であろう。書記の手引書としては,アッバース朝時代にスーリーal‐Ṣūlī(?‐947)が著した《書記の教養Adab al‐kuttāb》があり,地誌と歴史の総合も,部分的にではあるが,すでにマスウーディーの《黄金の牧場と宝石の鉱山》によってなされている。しかしスーリーの書は小冊子の入門書であり,マスウーディーの著作もさまざまな情報が収められてはいるが本質的には地理書と歴史書を要約してつなぎ合わせたものにとどまっている。…

※「マスウーディー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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