中国の代表的な揚水具の一つ。翻車ともいう。図のような細長い箱に数珠のように連結された多数の木の方板をはめこみ,箱の上部の輪軸に結合させ,人力で輪軸を回転させて揚水する構造をもつ。王禎の《農書》によると箱の幅は4~7寸(12~21cm),深さ1尺(約30cm),長さ1丈(3m)くらいが普通のようで,それ以上の高所へはリレー式に揚水する。だいたい後漢のころに始まるといわれるが,江南水田地帯の灌漑揚水具として最も使用されたので,一般での普及は唐・宋のころからと思われる。
執筆者:米田 賢次郎 日本にはおそらく中世に中国から伝えられ,江戸時代中期まで使われていた。しかし機械的な摩擦部分が多いため効率が悪く,しかも構造が複雑で故障も多かったため,あまり普及しなかった。寛文年間(1661-73)に現れた踏車(ふみぐるま)が,いずれの点でも優れていたので,竜骨車は踏車を設置しにくいような鉱山など一部を除いて,農業用としてはまったく使われなくなった。
執筆者:堀尾 尚志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、三国、魏(ぎ)の馬鈞(ばきん)が考案した揚水機。翻車ともよばれる。下端を河川に浸して斜めに置かれた細長い箱形の樋(とい)の中を、つながって輪になった木の鎖(自転車のチェーンのようなもの)に多数の木板を取り付けた「竜骨」が移動し、各木板が次々に水をすくって岸の上に掻(か)き上げる。竜骨は、水平な回転軸の中央部に軸と直角に放射状に突き出た腕(チェーン・ホイールに相当)にかけられており、水平軸の回転とともに順次移動する。水平軸は、人が手や足でペダルを動かして(足で踏むタイプを踏車という)、あるいは水平軸に歯車を取り付けて回転の向きを直角に変えてウシや水力で回転させる。中国では現在も江南地方などで使われ、日本でも滋賀県などでは近年まで灌漑(かんがい)に使われていた。17世紀には西洋にも伝わった。
[宮島一彦]
『J・ニーダム著、中岡哲郎他訳『中国の科学と文明9 機械工学』(1978・思索社)』▽『藪内清訳註『天工開物』(平凡社・東洋文庫)』
主として江戸前・中期に使用された揚水機。灌漑や鉱山の排水に用いられた。傾斜した箱状の樋(とい)の中に30枚ほどの水掻き板をとりつけ,箱の上部についている輪軸を2人の足で回転させることによって上方に送り,水を汲みあげる。中世に中国から伝来し,江戸前期に畿内を中心に普及したが,構造が複雑で壊れやすかったため,寛文年間に発明された踏車(ふみぐるま)が宝暦~安永頃を境に使用されると,しだいにすたれていった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…井戸の上に滑車をつるして手で巻き上げる〈つるべ〉がこれに続く。そして,といまたは筒を鎖上に並べてくみ上げる竜骨車タイプのもの(人力で動かす場合は踏車となる),さらに車輪の円周上におけまたは筒をとりつけて回転する筒車(ノーリア)タイプのものなどが現れた。これらの揚水機の動力源は,時代とともに,人力,畜力から水車や風車,やがて蒸気機関,電力へと移行していった。…
※「竜骨車」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加