日本大百科全書(ニッポニカ) 「食生活指針」の意味・わかりやすい解説
食生活指針
しょくせいかつししん
国民ひとりひとりが食生活の改善に取り組むように、厚生労働省が文部科学省や農林水産省と協議して策定する望ましい食生活を示した指針。その時代ごとの国民的な健康問題を考慮しつつ、望ましい食習慣を提示する。食生活でとくに留意すべき内容については、具体的な普及・啓発活動が展開される。
日本で最初に食生活指針が示されたのは、1945年(昭和20)の「昭和二十年八月食生活指針」で、このときは野草や雑穀を食料として取り入れるなど、戦時中の厳しい食糧難を物語る内容であった。1985年に厚生省(現、厚生労働省)が発表した「健康づくりのための食生活指針」では、1日30品目という具体的な目標を掲げたが、摂取品目を増やすために副菜を重視するあまり、過食傾向が現れるといった問題が生じたこともあった。
さらに1990年(平成2)には、農林水産省が「新たな食文化の形成に向けて――'90年代の食卓への提案」を発表した。ここでは「何を」「どれだけ」食べるかだけではなく、「どのように」(どのような行動を通じ、どのように意識して)食べるかを考えるべき段階にきているとして、ライフスタイルに対応した食生活スタイルを確立することを呼びかけた。
近年は、糖尿病などの生活習慣病、癌(がん)、心臓病が大きな健康問題となっており、野菜の摂取不足、食塩や脂肪のとりすぎ、男性や子供の肥満者の増加などといった問題に対し、食生活の改善を呼びかけている。最新の指針は2000年(平成12)に当時の厚生省と農林水産省、文部省が共同で策定した。同年をスタートとし、2010年の目標値を設定した「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)も開始された。2005年には具体的な行動に結びつける手引きとして、摂取基準や献立が食事バランスガイドとして公表された。また、近年の若い女性にやせすぎや食事に偏りのみられる人の割合が高まっていることから、2006年に「妊産婦のための食生活指針」(「健やか親子21」)を発表。妊娠期や授乳期の食事の内容や量を詳しく解説するとともに、母子の健康のために重要な食習慣をまとめた。
[編集部]