馬につける円錐形ないしやや扁平な筒形の青銅製品で,内部に舌(ぜつ)を垂下し,頂部の鈕(ちゆう)によって馬の頸(くび)や胸に下げ,馬の歩みにつれて音を出す。筒の下縁が直線のものと弧形をなすものとがある。中国では馬鈴(ばれい)という。しかし単独で発見されると,犬,ヤギ,牛あるいはラクダなどに下げたものとの区別はできない。カフカス起源の馬鐸は,前8世紀のウラルトゥの遺物や,アッシリアの壁画,浮彫に見られるように直線型であるが,東アジアで殷代から行われたのは多くが弧形型である。朝鮮の初期鉄器時代には両型式が用いられ,日本へは弥生時代にそれらが伝わった。しかし5~6世紀に朝鮮と日本で使われた馬鐸は,中国の三国・南北朝時代の弧形型の系統に属し,日本では扁平の度合を増し,弧が著しくなって片面だけに文様をつけ,高さ20cmばかりの大型になった。日本ではごくまれに金銅製がある。日本で馬鈴といえば球形あるいは楕円体の鈴(すず)で,馬の胸や尻に下げたものをいう。ほかに馬具の鈴として,三繫(さんがい)に一定の間隔で固定したものや,鏡板,杏葉(ぎようよう),辻金具などにつけた鈴がある。
→馬具
執筆者:小野山 節
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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