銅
どう
copper
元素記号 Cu ,原子番号 29,原子量 63.546。周期表 11族,銅族元素の1つ。主要な鉱石は黄銅鉱,輝銅鉱,赤銅鉱などである。地殻存在量は 55ppm,海水中の含有量は2 μg/l 。単体は赤色光沢がある金属で,展延性に富む。融点 1083℃,比重 8.93。導電率が高く,化学的抵抗も強く,柔靭性に富む。二酸化炭素や塩分を含む湿った空気中では緑色の錆 (緑青) を生じる。強熱すると 1000℃以下では黒色の酸化銅 CuO ,それ以上では Cu2O を生じる。熱硫酸,硝酸に可溶,可溶性塩は有毒である。電線,導線,建築用材,日常品,黄銅,青銅,その他の合金,貨幣,銅塩の製造など用途は広い。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
銅【どう】
元素記号はCu。原子番号29,原子量63.546。融点1084.62℃,沸点2571℃。金属元素の一つ。天然に自然銅としても産し,また製錬法も比較的簡単なため最も古くから知られてきた金属で,石器時代に次いで青銅器時代をつくった。日本では,《続日本紀》に698年銅鉱献上の条があり,708年武蔵国秩父郡から和銅が献上されたとある。単体は赤色の金属で和名〈あかがね〉はこの色に由来している。展性・延性に富み,熱および電気の伝導率大きく,銀に次ぐ。空気中で安定。ハロゲン,硫黄と直接反応し,熱濃硫酸,硝酸に溶け,塩酸,希硫酸などには酸素の存在下で溶ける。主要鉱石は硫化鉱物の黄銅鉱,輝銅鉱,斑銅鉱,酸化鉱物の赤銅鉱,炭酸塩鉱物のラン銅鉱などで,黄銅鉱が最も多い。日本では黒鉱(くろこう)も重要。製錬は選鉱後の精鉱を焙焼(ばいしょう)ののち,溶鉱炉または反射炉で加熱,溶錬し,得られた【かわ】を転炉で還元,銅分98%程度の粗銅とする。これを電解精製すると純度99.98%程度の電気銅が得られる。電気銅の多くは棹(さお)銅に鋳込んでから線に圧延する。銅の最大の用途は電線類で,そのほか伸銅品,鋳物は機械・器具,建築などに利用され,また青銅,黄銅その他の銅合金としても広く使用される。生体必須元素でもあり,酸化還元に関与する酵素などに含まれる。世界の銅鉱石産出は1990年に903万t(含銅量),主産国は米国,旧ソ連,ザンビア,チリ,カナダなど。
→関連項目粗銅|耐候鋼|耐食合金|非鉄金属
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
銅
原子番号29,原子量63.546,元素記号Cu,11族(旧Ib族)の元素.微量必須元素の一つ.オキシゲナーゼなどの必須元素.ヒト血液の正常値は100〜200μg/dl.第六次改定日本人の栄養所要量では15〜69歳の男性で,1日1.8mg,女性で1.6mgとされている.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
どう【銅】
鉄の利用効率を高めてヘモグロビンの形成を助けます。骨や血管の強化、過酸化脂質の分解、ビタミンCの利用にも関与しています。不足すると貧血、血管障害、リウマチ、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などをまねきます。スルメ、牛レバー、イイダコ、シャコ、ホタルイカ、カキ、ソラマメなどに多く含まれています。成人1日あたりの推奨量は男性0.9~1.0mg、女性0.7~0.8mg、上限は10mgです。
出典 小学館食の医学館について 情報
どう【銅】
微量ミネラルのひとつ。元素記号はCu。体内の組織に酸素を運ぶ運搬係であるヘモグロビンの合成に不可欠な構成要素。レバーなどの肉類、魚介類、豆製品などに多く含まれる。酵素の構成成分として筋肉・肝臓・骨などに分布し、赤血球の成分であるたんぱく質のグロビンと鉄の結合したヘモグロビン生成を助け、吸収を促進する働きをもつほか、鉄の吸収率・利用率の向上、コラーゲン・エラスチンの生成に働いて骨・血管壁などの強化、過酸化脂質の生成の抑制、白血球の免疫力向上などに効果があるとされる。
出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報
どう【銅 copper】
周期表元素記号=Cu 原子番号=29原子量=63.546±3地殻中の存在度=55ppm(25位)安定核種存在比 63Cu=69.1%,65Cu=30.9%融点=1084.5℃ 沸点=2595℃固体の比重=8.92(20℃)液体の比重=8.3(1083℃)電子配置=[Ar]3d104s1 おもな酸化数=I,II周期表第IB族に属する金属元素の一つ。同族の金とともに代表的な有色金属で,和名〈あかがね〉はこの色に由来している。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
どう【銅】
11 族(銅族)に属する遷移元素の一。元素記号 Cu 原子番号29。原子量63.55。天然には黄銅鉱・孔雀石・輝銅鉱・赤銅鉱などとして産出。光沢ある赤色の金属で展性・延性に富む。炎色反応は青緑色を呈する。比重8.95。湿った空気中ではさびて緑青ろくしようを生ずる。熱・電気の伝導度は銀に次ぐ。古くから用いられ、そのまま、あるいは青銅・黄銅などの合金にして用いる。また、生体、特に植物にとって重要な働きをする。あかがね。
出典 三省堂大辞林 第三版について 情報
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
あか‐がね【銅】
〘名〙
① 銅。あか。
※書紀(720)推古一三年四月(北野本訓)「始めて銅(アカカネ)、繍(ぬひもの)の丈六の仏像(ほとけのみかた)、各一躯(はら)を造る」
※枕(10C終)一二三「七月の修法の阿闍梨。〈略〉また、おなじ頃のあかがねの鍛冶」
※
邪宗門(1909)〈
北原白秋〉朱の伴奏・地平「あな哀れ、今日もまた銅
(アカガネ)の雲をぞ生める」
[
語誌](1)「
説文解字」などに見られる「銅 赤金也」を直訳した、いわゆる字訓注としてできた語か。
(2)「観智院本名義抄」の「銅」字の訓アカカネに付された声点によって、第三音節は濁音であることが確認できる。
どう【銅】
[1] 〘名〙 銅族元素の一つ。元素記号 Cu 原子番号二九。原子量六三・五四六。赤色の金属光沢をもつ金属。等軸晶系。天然には黄銅鉱・斑銅鉱・輝銅鉱・赤銅鉱・藍銅鉱・
孔雀石などとして産出。最も古くから用いられた金属で、展性・延性・加工性にすぐれ、強さがある。
二酸化炭素・二酸化硫黄または塩分を含む湿気中では表面に明緑色の
緑青(ろくしょう)を生じる。酸に侵されやすい。熱および電気の良導体で伝導率は銀についで大きい。電気導体・合金材などとして広く用いられる。〔書経伝‐禹貢〕
[2] 〘接尾〙 銅銭を数えるのに用いる。文(もん)。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
世界大百科事典内の銅の言及
【銅細工】より
…金工の一種。8世紀中葉から銅工の名をもって現れるが,彼らは官営工房の造東大寺司,興福寺金堂造物所,内匠寮に所属した。律令体制の衰退とともに官営工房から出た彼らは,平安京にあっては金工が蝟集する七条あたりに住していたものと思われるが,平安時代後期から鎌倉時代初頭にかけて,大きく力を伸張し,たとえば1186年(文治2)には七条の銅細工が,紀伊国由良庄を押妨したとして訴えられているのは(《吾妻鏡》),そうした動向をよく語っている。…
【海洋汚染】より
…自動車のエンジンのアンチノック剤として使用された四エチル鉛が,ガソリンとともに燃えて酸化鉛となって大気中を運ばれ,海面に落下するためである。また鉱・工業からの廃液中の銅が沿岸のカキを汚染し,緑色の有毒カキが生産されたことも有名な事件である。(3)DDT,PCBの汚染 農業の生産性を高めるために,どこの国でも,多量の化学肥料や農薬を用いている。…
【コッパー・ベルト】より
…アフリカ南部のザンビアからコンゴ民主共和国にかけて連続する,長さ約500km,幅約80kmの世界有数の銅鉱床地帯。ここから生産される銅により,両国はアメリカ,ロシア,チリに次ぎ,カナダと並ぶ主要産銅国となっており,世界の陸上銅資源の12%を埋蔵していると推定されている。…
【資源】より
…ひとくちに資源・エネルギーとあらゆる資源をひとまとめに扱うことが多いが,実際の資源問題の展開のしかたは資源の種類によって違い,とくに需要と供給の経済動向からみるとエネルギーは他の資源ときわ立って違う。たとえば昔は高価であった銅は有史以来の実質価格でみるかぎり下がりつづけており,今後上がる可能性は少ないとみられている。一方エネルギー価格は上がりつづけているという。…
【鉛】より
…粗鉛中には,大部分の金,銀,ビスマス,一部のヒ素,アンチモン,スズが吸収されている。銅は,含まれる量が少ないときや焼結鉱の脱硫度が低いときには粗鉛中に,その他の場合は鉄の硫化物とともにかわ(鈹)をつくる。亜鉛は大部分がからみに入る。…
【日朝貿易】より
…このうち私貿易は,密貿易や国家機密の漏洩などの弊害が伴ったため,後には禁止されることが多くなった。輸出品は,大別すると鉱山物(銅,スズ,硫黄など),国内工芸品(漆器,屛風,扇など),東南アジア産品(コショウ,ミョウバン,蘇木(そぼく),犀角,白檀,沈香など)であったが,足利氏の輸出品は国内工芸品が多く,対馬島宗氏は東南アジア産品が多いなど,交易者の地域的特性によって内容が異なっていた。輸入品は,米,豆,織物類(麻布,綿布など)が多く,ほかにニンジン,花蓆,皮類(トラ,ヒョウなど),種子(松の実,榛子など),あるいは日本側の要請により,大蔵経・仏具・朝鮮本が贈られることがあった。…
【非鉄金属工業】より
…非鉄金属とは広義には鉄以外の金属の総称であるが,一般的には銅,鉛,亜鉛,スズ,タングステンなどの金属を指し,アルミニウムやマグネシウムなどは軽金属,金,銀,白金などは貴金属として区別することが多い。なかでも銅,鉛,亜鉛は各種の基礎資材として大量に使用され,資源も豊富なため,ベースメタルと呼ばれる。…
【非鉄金属鉱業】より
…非鉄鉱物資源を探査・発見し,これを採掘・取得し,選鉱・製錬する産業。非鉄金属とは広義には鉄以外の金属すべてのことであるが,一般的には銅,鉛,亜鉛,スズ,ニッケル,コバルト,タングステンなどのことを指し,金,銀などは貴金属,アルミニウム,マグネシウム,チタンは軽金属として区別されることが多い。世界の生産量(含有量)は銅鉱1002万tで,うちチリ249万t,アメリカ185万t,旧ソ連80万tなど,鉛鉱は269万tで,うちオーストラリア45万t,アメリカ41万t,中国40万tなど,亜鉛鉱は700万tで,うちカナダ111万t,中国100万t,オーストラリア90万tなど,スズ鉱は19万4600tで,うち中国5万4000t,インドネシア4万6100t,ペルー2万2300tなどである(1995)。…
※「銅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報