日本歴史地名大系 「鹿児島県地誌」の解説
鹿児島県地誌
かごしまけんちし
一八巻 鹿児島県編
成立 明治一五年頃から同一七年か
原本 鹿児島県立図書館
解説 明治八年、明治政府が「皇国地誌」編纂の基礎資料とするために全国府県に管轄郡村の地誌提出を示達したのを受けて、鹿児島県が編纂した本県最初の近代的総合地誌。内容は各郡町村の疆域や沿革、鹿児島県庁から各郡郷村への里程、地勢や地味・山・川・森林・原野・河川・瀑布・湖沼・島・気候などの自然環境、おもな集落立地の地字、税地と官有地の面積や土地利用状況、地租や地方税・営業税などの納税額、戸数(族籍別)や人口(族籍別・性別)、牛馬数、船舶数、人力車・荷車数、郡役所や戸長役場・軍鎮・裁判所・警察署・学校・郵便局・病院などの公共主要機関、道路や港湾・津渡・堤塘などの施設、神社や古跡(城跡・寺跡)・名勝・墳墓・温泉など名所旧跡、おもな物産と住民の生業など、統計数値を用いて網羅的・具体的に示している。鹿児島県では近世末期から明治初期にかけて多くの地誌類が作られたが、それらはいずれも郡郷村の沿革・神社仏閣・名所旧跡・高山嶺岳・河川・特産などの類の記述にとどまっているため、「鹿児島県地誌」の記述は当時の郷村の実勢や庶民生活の実態を知るうえで非常に貴重である。ただし現存するのは旧薩摩国一二郡の分で、同国甑島郡と大隅国の分は失われている。旧日向国南諸県郡の志布志・大崎・松山の三ヵ郷二四村分は「日向地誌」でみることができる。大隅国の姶良・桑原・囎唹三郡分の統計数値は、明治一四年に成立した鹿児島県姶良桑原囎唹郡役所管内一覧概表によりほぼ補うことができる。
景印本 鹿児島県史料集一六・一七
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報