鹿の子絞(読み)カノコシボリ

デジタル大辞泉 「鹿の子絞」の意味・読み・例文・類語

かのこ‐しぼり【鹿の子絞(り)】

鹿の背の白いまだらに似た絞り染め。鹿の子染め。鹿の子結い。鹿の子目結い。

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精選版 日本国語大辞典 「鹿の子絞」の意味・読み・例文・類語

かのこ‐しぼり【鹿子絞】

  1. 〘 名詞 〙 絞り染めの一種。布を結びしばって染色し白い斑点模様を染め出す。上代では纐纈(こうけち)、ゆわた、中世ではくくし染、目結(めゆい)目染、括(くくり)染などといい、桃山江戸時代に全盛した。三纈の一つ。鹿子染(かのこぞめ)鹿子結(かのこゆい)鹿子目結(かのこめゆい)。かのこ。
    1. [初出の実例]「縮緬の鹿子絞りは緋を専とし」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)一七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鹿の子絞」の意味・わかりやすい解説

鹿の子絞り
かのこしぼり

絞り染めの一種で、小さな、やや不正形の白い輪の文様が、あたかも鹿(しか)の背のまだらのように表されたもの。技法は、小さい輪形に染め抜く部分の中央を、指先または鉤針(かぎばり)を用いてつまみ、その部分を糸でくくって防染して染めるので、糸が巻いてある部分が白い輪になって残る。絞りのなかでも素朴な技法であるから、もっとも古くから行われたものであり、また各地にこの種の絞り染めがある。

 中国唐代の出土染織品にもこの種の絞り染めはしばしばみられ、わが国の法隆寺正倉院の伝世染織品(飛鳥(あすか)・奈良時代)纐纈(こうけち)中にはこれに類するものが多い。わが国近世初期以降の小袖(こそで)類に華麗な文様とぜいたくさを盛った匹田(ひった)絞りは、この鹿の子絞りが技法的にひとくふうされ進展した姿である。

[神谷栄子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鹿の子絞」の意味・わかりやすい解説

鹿の子絞り
かのこしぼり

京極絞りともいう。鹿の子まだらを白く染め抜いた絞染。京都名産で,布地のところどころを糸で絞って,これを染液に浸し,のちに糸を解くと,絞った部分だけが白く残る。木綿鹿の子,絹鹿の子などがある。用途は,帯揚げ,着尺地など。1反を絞るのに長期間を要し,近年は絞り仕事の人件費の高騰から,韓国などに絞り仕事を下請けさせる例が増加している。

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世界大百科事典(旧版)内の鹿の子絞の言及

【鹿の子】より

…鹿の子絞の略。鹿の背にあるまだらに似たことから出た名称であろう。…

※「鹿の子絞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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