藤枝静男(読み)フジエダシズオ

デジタル大辞泉 「藤枝静男」の意味・読み・例文・類語

ふじえだ‐しずお〔ふぢえだしづを〕【藤枝静男】

[1907~1993]小説家静岡の生まれ。本名、勝見次郎。戦後眼科医のかたわら文筆生活に入る。志賀直哉傾倒現実幻想を織り交ぜた私小説を書く。「空気頭」で芸術選奨。他に「欣求浄土ごんぐじょうど」「田紳有楽」「悲しいだけ」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤枝静男」の意味・わかりやすい解説

藤枝静男
ふじえだしずお
(1907―1993)

小説家。明治40年12月20日、静岡県藤枝町(現藤枝市)の生まれ。本名勝見次郎。第八高等学校を経て千葉医科大学卒業。八高時代に平野謙(けん)、本多秋五(しゅうご)と交わり、その友情は久しきにわたって続く。奈良の志賀直哉(なおや)を訪ね、のち志賀周辺の重要人物となる。大学時代にマルクス主義に共感しつつも公式主義的な考え方にはついていけなかった。第二次世界大戦後、妻の実家で眼科医の仕事に従事、また本多らが創刊した『近代文学』の陰の担い手となり、自らも短編『路(みち)』(1947)を「藤枝静男」の筆名で初めて発表。第一創作集『犬の血』(1957)で文壇に登場。私小説的姿勢を堅持しつつ夢などを媒介させた超現実的要素を大胆に導入、『空気頭(あたま)』(1967)においてその実験が成功。私小説を現代小説として活性化させ、志賀や滝井孝作(たきいこうさく)のリアリズムを発展させる力量を発揮した。『欣求浄土(ごんぐじょうど)』(1970)や谷崎潤一郎賞を受けた『田紳有楽(でんしんゆうらく)』(1976)もその延長線上の代表作。ほかに『凶徒津田三蔵』(1961)、『或(あ)る年の冬 或る年の夏』(1971)がある。発表誌は『群像』が中心で、妻の死を凝視した『悲しいだけ』(1977)も力作。平成5年4月16日没。

紅野敏郎

『『藤枝静男著作集』全6巻(1976~77・講談社)』

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20世紀日本人名事典 「藤枝静男」の解説

藤枝 静男
フジエダ シズオ

昭和・平成期の小説家



生年
明治40(1907)年12月20日(戸籍:明治41年1月1日)

没年
平成5(1993)年4月16日

出生地
静岡県藤枝町(現・藤枝市)

本名
勝見 次郎

学歴〔年〕
千葉医科大学眼科〔昭和11年〕卒

学位〔年〕
医学博士

主な受賞名〔年〕
芸術選奨文部大臣賞(文学・評論部門・第18回)〔昭和42年〕「空気頭」,平林たい子文学賞(第2回)〔昭和49年〕「愛国者たち」,谷崎潤一郎賞(第12回)〔昭和51年〕「田紳有楽」,中日文化賞(第31回)〔昭和53年〕,野間文芸賞(第32回)〔昭和54年〕「悲しいだけ」

経歴
大学卒業後、医局で眼科を研究。昭和17年平塚の海軍火薬廠付属病院に勤務。戦後は妻の実家で眼科診療を手伝い、25年浜松市で眼科医院を開業。文学の面では志賀直哉、滝井孝作に私淑し、22年に初作「路」を発表。42年「空気頭」で芸術選奨を、49年「愛国者たち」で平林たい子文学賞を、51年「田紳有楽」で谷崎潤一郎賞を、54年「悲しいだけ」で野間文芸賞を受賞。他に「イペリット眼」「犬の血」「凶徒津田三蔵」「欣求浄土」「異床同夢」、「藤枝静男著作集」(全6巻 講談社)などがある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

百科事典マイペディア 「藤枝静男」の意味・わかりやすい解説

藤枝静男【ふじえだしずお】

小説家。本名勝見次郎。静岡県生れ。千葉医大卒。戦後,眼科医を開業。一方,本多秋五平野謙らの勧めで《近代文学》に《路》(1947年),《犬の血》(1956年)などを発表。《凶徒津田三蔵》(1961年)で認められ,《空気頭》(1967年)で芸術選奨受賞。《欣求浄土》,《怠惰な男》,《愛国者たち》(平林たい子賞),《田紳有楽》(谷崎潤一郎賞),《悲しいだけ》(野間文芸賞)などがある。晩年は,志賀直哉的倫理観から一種特異な心境小説に達した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「藤枝静男」の解説

藤枝静男 ふじえだ-しずお

1907-1993 昭和-平成時代の小説家。
明治40年12月20日生まれ。八高時代に平野謙,本多秋五と交遊をもつ。志賀直哉に傾倒。昭和22年「近代文学」に「路」を発表。眼科医と文筆生活を両立させ,私小説の世界と幻想奇想の世界とをあわせもつ作品を生みだした。平成5年4月16日死去。85歳。静岡県出身。千葉医大(現千葉大)卒。本名は勝見次郎。作品に「空気頭」(昭和43年芸術選奨),「欣求浄土(ごんぐじょうど)」「凶徒津田三蔵」など。
【格言など】中身のないことにくよくよと迷うのは,自分自身の生活が不自然だからだ

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367日誕生日大事典 「藤枝静男」の解説

藤枝 静男 (ふじえだ しずお)

生年月日:1907年12月20日
昭和時代;平成時代の小説家
1993年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の藤枝静男の言及

【私小説】より

…その中のかなりの部分は私小説への批判や提言に対応する形で私小説の変質を実現しつつある。藤枝静男が《空気頭》(1967)でシュルレアリスム風のフィクションを混合した上に,グロテスク性を追求して私小説に荒々しいダイナミックスを与えたのがその顕著な例である。一方,“第三の新人”は家庭と日常生活の再認識に向かい,島尾敏雄《死の棘(とげ)》(1960‐76),安岡章太郎《海辺(かいへん)の光景》(1959),庄野潤三《静物》(1960),阿川弘之《舷灯》(1966)などを生んだ。…

※「藤枝静男」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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