黒鍬(読み)クロクワ

デジタル大辞泉 「黒鍬」の意味・読み・例文・類語

くろ‐くわ〔‐くは〕【黒×鍬】

戦国時代築城開墾道普請などに従事した者。黒鍬者
江戸時代江戸城内の城番作事防火掃除などに従事した者。
江戸時代、主として川普請新田開発などの工事に従事した者。
久六鍬きゅうろくぐわ

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精選版 日本国語大辞典 「黒鍬」の意味・読み・例文・類語

くろ‐くわ ‥くは【黒鍬】

〘名〙
① 戦国時代、築城、開墾、道普請などに従った人夫。黒鍬の者。黒鍬者。〔武家名目抄(19C中か)〕
② 江戸時代、江戸城内の掃除や荷物などの運搬等の雑役に従う下級の役。十二俵一人扶持。黒鍬の者。黒鍬者。黒鍬同心。〔随筆・幕朝故事談(1789‐1801か)〕
③ 江戸時代の土工。主として川普請や新田開発工事を受け持った労働者。黒鍬の者。黒鍬者。
夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部「貧窮な黒鍬(クロクハ)小前のものを思ふ彼の心は既にその頃から養はれた」

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改訂新版 世界大百科事典 「黒鍬」の意味・わかりやすい解説

黒鍬 (くろくわ)

戦国時代に城や道の普請,陣中の雑役にあたった軽輩。また江戸幕府の職制の一つ。黒鍬者また黒鍬之者あるいは黒鍬同心ともいう。城内の掃除や荷物の運搬などの雑役に従事し,身分はきわめて軽く,勤仕して数年を経なければ名字を許されなかった。定員470人(役高12俵一人扶持,御目見以下,譜代席),これを3組に分かち,各組に頭1人(役高100俵持扶持,御目見以下,上下役,目付支配,御台所前廊下詰,譜代席),組頭2人(役高なし)があった。このほかに江戸時代の貧農で堤防や道路普請の土方をつとめたものも黒鍬と称した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒鍬」の意味・わかりやすい解説

黒鍬
くろくわ

黒鍬之者または黒鍬者ともいう。戦国時代には、築城、道づくり、武器・兵糧米の運搬、敵陣の破壊や死体の収容などに従う軽輩をいう。江戸時代には作事奉行(さくじぶぎょう)の支配に属し、組、組頭(くみがしら)の編成で江戸城の警備、防火、土木工事にあたり、城内の掃除や草取り、荷物運搬の雑用に働いた。身分は、脇差(わきざし)だけは許された中間(ちゅうげん)、小者(こもの)と同列であり、当初は苗字(みょうじ)は許されなかった。食禄(しょくろく)12俵一人扶持(ぶち)、頭(かしら)は100俵。1731年(享保16)には人数430人。なお、これとは別に江戸後期に農村でも農民の階層分化の進行に伴い貧農のなかから出稼ぎにより、田畑の耕作、堤防・道路工事に従う者がいたが、これらの日雇労務者や出先で定住する者を黒鍬と称していた。

[村上 直]

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百科事典マイペディア 「黒鍬」の意味・わかりやすい解説

黒鍬【くろくわ】

黒鍬者ともいう。戦国時代では築城,道路工事などに従事する軽輩。戦死者の収容にも当たった。江戸時代では作事(さくじ)奉行配下にあり,江戸城の警備,作事,防火などに任じた。のち城内の清掃,荷物の運搬も行い,黒鍬頭,黒鍬同心が置かれた。

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世界大百科事典(旧版)内の黒鍬の言及

【くわ(鍬)】より

…耕刃が柄に鋭角状にとりつけられた人力農具で,柄を手でにぎり,耕刃を地面に強くあるいは軽くうちつけて使用する。すき(犂),掘棒とならぶ代表的な耕具で,くわを主要耕具とするくわ農耕地帯は熱帯にあり,バナナやタロイモの分布範囲とほぼ対応しているが,そのうちメラネシア,ポリネシアでは掘棒と,また南~東南アジアではすきと併存している。温帯のすき農耕地帯でも補助農具として広く使用されている。大航海時代以前の南北アメリカではすきがなく,くわ農耕が温帯まで広がり,熱帯では掘棒と併存していた。…

※「黒鍬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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