として(読み)トシテ

デジタル大辞泉 「として」の意味・読み・例文・類語

と‐し‐て

[連語]格助詞または断定助動詞「たり」の連用形「と」に、サ変動詞「す」の連用形「し」、接続助詞「て」の付いたもの》
…の資格で。…の立場で。「公人として発言する」「親として当然のことをしたまでだ」
それまでの話の内容をひとまず保留して、別の話題に移る意を表す。「仕事はいいとして、からだのぐあいはどうだい」
(下に打消しの語を伴って)例外なく全部である意を表す。「一人として生き残った者はいない」「一時いっときとして目が離せない」
…で。
「それがし一人―たぶるもいかがでござるほどに」〈虎明狂・口真似
[補説]1を格助詞、2を接続助詞、3副助詞などとする説もある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「として」の意味・読み・例文・類語

と‐して

  1. 〘 連語 〙 ( 格助詞「と」または断定の助動詞「たり」の連用形「と」に、サ変動詞「す」の連用形「し」と接続助詞「て」の付いたもの )
  2. ( 動詞「す」が原義を比較的強くとどめている場合 ) …と思って。…しそうになって。
    1. [初出の実例]「長く遠く仕へ奉れ等之弖(トシテ)冠位上げ賜ひ」(出典:続日本紀‐天平一五年(743)五月五日・宣命)
  3. ( 体言に付いて ) 全体で一つの格助詞のように用いる。
    1. (イ) …の資格で。…の立場で。
      1. [初出の実例]「夫れ人止之天(トシテ)己が先祖(とほつおや)の名を興し、継ぎひろめむと念はずあるはあらず」(出典:続日本紀‐天平宝字八年(764)九月二〇日・宣命)
      2. 「たかき家の子として、官(つかさ)かうぶり心にかなひ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
    2. (ロ) 「も」を強めた表現。多く、下に打消を伴って「例外なく全部」の意となる。
      1. [初出の実例]「波若に由るが故に、行として成ぜ不といふこと无く、累として、尽き不といふこと无し」(出典:法華義疏長保四年点(1002)二)
    3. (ハ) …でもって。…で。
      1. [初出の実例]「是某一人としてたぶるもいかがでござる程に」(出典:虎明本狂言・口真似(室町末‐近世初))
  4. 全体で接続助詞のように用いられ、連用中止機能を表わす。
    1. [初出の実例]「ほそやかにたをたをとして物うちいひたるけはひ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
  5. ( 接続詞的用法 ) 近世、女性の手紙で、前文から本文に移るときの語。それはそれとして。さて。
    1. [初出の実例]「一通りは知れた事、として我事も愈請出極り候故」(出典:浄瑠璃・道中亀山噺(1778)四)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android