日本大百科全書(ニッポニカ) 「環境破壊兵器禁止条約」の意味・わかりやすい解説
環境破壊兵器禁止条約
かんきょうはかいへいききんしじょうやく
環境改変技術の軍事使用は、ベトナム戦争中の枯れ葉作戦や降雨作戦などにより注目をひき、1972年国連人間環境会議の人間環境宣言(原則26)は、この種の兵器を禁止する条約の締結を勧めた。この状況の下でジュネーブ軍縮委員会(現軍縮会議)での検討を経て、「環境改変技術の軍事的使用その他の敵対的使用の禁止に関する条約」が76年国連総会で採択された(78年発効)。この条約は、破壊、損害または傷害を引き起こす手段として、広範な、長期的な、または深刻な効果をもたらす環境改変技術の軍事的または敵対的使用を禁止する。ここにいう「環境改変技術」とは、自然の作用を意図的に操作することにより地球または宇宙空間の構造、組成、運動に変更を加える技術をさす。軍縮委員会での了解によれば、「広範な」とは、数百平方キロメートルの規模の地域が包囲されるような範囲、「長期的な」とは、数か月またはほぼ一季節の間持続するような期間、「深刻な」とは、人命、天然資源などに対する重大なまたは著しい破壊をもたらすような程度をいう。この技術の使用により引き起こされる現象の例示としては、地震、津波、地域の生態学的均衡の破壊、天候の変更、海流の変更、オゾン層の変更、電離層の変更があげられる。なお、この技術の平和的目的のための使用は妨げられず、締約国はこれに関する科学的および技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束し、この交換に参加する権利をも有する。日本は82年(昭和57)この条約に加入した。
[藤田久一]