足の裏(足底)にみられる皮膚隆線と皮膚小溝によって形成される紋理をいい、足底紋、足蹠紋(そくしょもん)ともよぶ。裸足の足跡(足型foot mark)、さらには履き物跡をも含めた広義の足跡を意味することもある。足紋は、同じ皮膚紋理でも指紋、手紋に比べて未分化の傾向にあり、また、印象(足形)のとりにくさもあって、実際上の応用範囲は限定されている。しかし、足紋は指紋と同じく万人不同、終生不変であるため、絶対的な正確さで各個人の識別が可能である。足紋自体は遺伝子によって支配、表現される遺伝形質であるが、その遺伝様式は他の皮膚紋理と同様に解明されていない。なお、相対的な類似性、特定紋様の出現性などに着目し、親子鑑定に利用することもあるが実用性に欠ける。なお紋理分布には民族差がみられる。また、染色体数の異常である18トリソミー患者では紋様の識別不能な足紋がみられるなど種々の先天性異常と皮膚紋理との関係が判明し、現在では指紋、掌紋をも含めた皮膚紋理学として人類遺伝学、人類学、臨床医学の分野で研究、応用されている。
足紋の基本的分類は次のとおりである。(1)足母指球部(第1指間+母指球遠位側)にみられる足母指球紋の形態および方向によって、たとえばLb(遠位側蹄状紋(えんいそくていじょうもん))、Lt(脛側蹄状紋(けいそくていじょうもん))、At(腓側弓状紋(ひそくきゅうじょうもん))、W(渦状紋)などと分類、記号化する。(2)指間紋は3区域について紋理の有無、形態を記録する。(3)足指の三叉(さんさ)は手掌と同じく、主線の走向によって分類する。なお、人によっては母指に対応する三叉のほか、中央部近くにも三叉がみられることもある。(4)小指球(腓側)紋の有無、形態を記録する。(5)踵紋(しょうもん)の有無、形態を記号化し分類する。記載にあたっては、(1)~(5)の順で進められる。
[小谷淳一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…指や手のひら,足底の皮膚に浮きでるように走るたくさんの線状の隆起を皮膚隆線または単に隆線といい,隆線上には汗腺が並んで開口している。この隆線が指頭でつくる紋理(紋様)またはこの紋理を捺印した像を指紋という(ちなみに手のひらや足底にみられる紋理はそれぞれ掌紋,足紋といわれる)。指紋は万指不同,終生不変であるので,身元不明者の身元確認,犯罪者の異同(個人)識別などに応用されている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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