日本大百科全書(ニッポニカ) 「3密」の意味・わかりやすい解説
3密
さんみつ
換気の悪い「密閉空間」、多数が集まる「密集場所」、間近で会話や発声をする「密接場面」を表した語。
2019年末に中国・湖北(こほく)省武漢(ぶかん)市で確認された新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の世界的な感染拡大を受け、2020年3月9日の厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は次のような見解を出した。すなわち、新型コロナウイルスの感染が広がる場面(クラスターが発生する場面)としてこれまで感染が確認された場に共通するのは、「(1)換気の悪い密閉空間であった、(2)多くの人が密集していた、(3)近距離での会話や発声が行われた、という三つの条件が同時に重なった場」であることが示された。これらは、国内での感染拡大事例の場面から類推する形で特定されたもので、その後はこうした場面を日常において徹底的に避けることで感染拡大を抑制することが求められた。
これを、(1)換気の悪い密閉空間、(2)多数が集まる密集場所、(3)間近で会話や発声をする密接場面=「三つの密(3密)」という表現を用いて首相官邸がポスターを作成したことから、以後「3密」ということばが広く国民の間でも周知されるようになった。「3密」はその後、“3Cs”(Three Cs=closed spaces, crowded places and close-contact settings)として世界にも発信された。
3密を避ける対策としては、密閉空間については新しい空気をこまめに入れること(換気)、密集については距離を開けること、密接(会話)についてはマスクをすること、または長時間の会話を避けることである。
なお、「3密」では具体的な場面がわかりにくいということで、政府からは「感染リスクが高まる『5つの場面』」として、(場面1)飲酒を伴う懇親会等、(場面2)大人数や長時間に及ぶ飲食、(場面3)マスクなしでの会話、(場面4)狭い空間での共同生活、(場面5)居場所の切り替わり(仕事の休憩時間等で居場所を変えた際に、環境の変化や気の緩みからリスクが高まることがある)、が示されている。
[和田耕治 2021年10月20日]