果物や野菜などの青果物を気密性の高い冷蔵室に入れ,室内の炭酸ガス濃度は大気よりも高く,また酸素濃度は低くなるようにガス組成を調節して長期間貯蔵する方法。青果物は水分含量が多くて腐敗しやすく,また収穫後も蒸散や呼吸が盛んなので,しおれやすく,糖や酸の含量も急速に低下する。したがって,青果物の鮮度や品質をかなりの期間保持するためには,一般に低温で貯蔵して蒸散や呼吸を抑え,微生物の繁殖を防ぐ必要がある。低温に弱い熱帯,亜熱帯産のものを除き,貯蔵適温は0~4℃のものが多い。しかしこのような低温下にある青果物でも,さらに室内の炭酸ガス濃度を高めたり,酸素濃度を下げたりすると,種類によっては呼吸がより一層抑えられ,より長く良好な品質を保持できるようになり,出庫後の日持ちもよくなる。リンゴの場合,ガス組成は炭酸ガス,酸素とも3%前後がよいとされるが,品種によって若干異なる。炭酸ガス濃度が高すぎたり,酸素濃度が低すぎると,果肉が褐変したり,食味が劣化するなどの障害が発生する。冷蔵室を青果物で満杯にすると,青果物の呼吸により炭酸ガス濃度が高まり,酸素濃度は低下して,1ヵ月近くのうちにはほぼ所定の濃度になるので,その後は消石灰(水酸化カルシウム)などで過剰の炭酸ガスを除去し,ときどき外気を入れて酸素を補充すればよい。近年ではプロパンガスなどを燃焼させ,所定の組成のガスを作り,これを最初から室内に流す方式も実用化している。この場合には,冷蔵室の気密性は多少悪くてもよく,また貯蔵中,青果物を出し入れしても,すぐ所定のガス濃度に調節できる。
CA貯蔵は,日本でもリンゴで1975年ころから本格的に実用化され,現在種々の青果物で試験が行われているが,世界的にみても最も大量にCA貯蔵されているのはリンゴである。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
果物の貯蔵法の一つ。貯蔵庫内の空気の組成と温度・湿度を調節して、果物が呼吸や蒸散などで成分を消耗するのを遅延させる。リンゴ、ナシ、カキ、ブドウや柑橘(かんきつ)類などの貯蔵に利用される。初期のものは、果物の呼吸によって発生する二酸化炭素を利用したが、現在では二酸化炭素発生装置を用い、一定の組成の空気をつくり庫内に送り込む。
[星川清親]
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