水酸化カルシウム(読み)すいさんかかるしうむ(英語表記)calcium hydroxide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化カルシウム
すいさんかかるしうむ
calcium hydroxide

カルシウムの水酸化物。消石灰ともいう。酸化カルシウム生石灰)に水または水蒸気を作用させると得られる(生石灰の消和)。急速に生成したものは白色粉末であるが、水中に放置すると六方晶系の板状晶に変わる。加熱すると580℃で水蒸気を出して分解し、酸化カルシウムに戻る。

  Ca(OH)2→CaO+H2O
 水にわずかしか溶けず、しかも温度が上昇すると溶解度はかえって減少する。水溶液は石灰水とよばれ、強いアルカリ性を示す。工業的には懸濁液の形で使われることが多く、これは石灰乳とよばれる。固体または溶液の状態で二酸化炭素を吸収し、水に不溶性の炭酸カルシウムに変わる。

  Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
 また、塩素を吸収して次亜塩素酸カルシウム高度さらし粉の主成分)を生成する。

 水酸化カルシウムは安価な強アルカリ物質なので、酸性廃棄物の処理剤、酸性土壌の中和剤、消毒剤などとして用いられる。化学工業ではさらし粉原料となるほか、反応用アルカリとして広く利用され、建築分野でもモルタル、漆食(しっくい)の材料として重要である。

[鳥居泰男]


水酸化カルシウム(データノート)
すいさんかかるしうむでーたのーと

水酸化カルシウム
  Ca(OH)2
 式量  74.1
 融点  ―
 沸点  ―
 比重  2.24
 結晶系 六方
 屈折率 (n) 1.574
 溶解度 0.126g/100g(水20℃)
     0.077g/100g(水100℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水酸化カルシウム」の意味・わかりやすい解説

水酸化カルシウム
すいさんかカルシウム
calcium hydroxide

化学式 Ca(OH)2 。消石灰ともいう。酸化カルシウム (生石灰) CaO に水を作用させてつくる。無色結晶。 100℃で分解しはじめ,580℃以上で完全に酸化カルシウムになる。塩化アンモニウム水溶液に可溶,エチルアルコールに不溶である。二酸化炭素の吸収剤,モルタルやセメントの原料,殺虫剤や医薬品として用いられる。

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