H3ロケット(読み)えいちすりーろけっと

共同通信ニュース用語解説 「H3ロケット」の解説

H3ロケット

国産の大型ロケットで、柔軟性、高信頼性、低価格の要素を兼ね備えた使いやすさを目指している。1段目の主エンジンには、新たに開発した「LE―9」を採用。機体全体も大型化し、現在主力のH2Aよりも、大きく、重い衛星を打ち上げられる。市販品の利用や3Dプリンターを用いた部品製造、小型ロケット「イプシロンS」と技術や部品を共通化することで、徹底した低コスト化を図る。名前の「H」は燃料に使う水素元素記号に由来する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「H3ロケット」の意味・わかりやすい解説

H3ロケット
えいちすりーろけっと

H-ⅡA・H-ⅡBロケットの後継機として、宇宙航空研究開発機構JAXA)と三菱重工業(プライムコントラクター)が共同で開発を進めている大型打上げロケット。

 複数の形態を開発し、利用目的にあった価格・打上げ能力のロケットを提供できる柔軟性を備えること、打上げ成功率のいっそうの向上を図ること、および打上げ価格を大幅に低減することにより、2020年代以降の世界の打上げ需要に効率よく対応できるシステムの実現を目ざしている。

 H3は2段式で、液体酸素(液酸)・液体水素(液水)推進剤を使用する第1段と第2段は各形態共通で直径5.2メートル。第1段には、新たに開発する真空中推力1471キロニュートンの大型液酸・液水エンジン(LE-9)を装備する。全長63メートル。

 H-ⅡAとH-ⅡBの第1段はそれぞれ直径4メートル、5.2メートルと異なっているが、H3では5.2メートルに統一。必要な打上げ能力に応じて、LE-9を2基または3基、固体ロケットブースター(SRB-3)を0本、2本または4本装備する。

 SRB-3は、H-ⅡA・H-ⅡB用固体ロケットブースターの改良型であるが、第1段主エンジンの合計推力が大きくなったことにより主エンジンだけで姿勢制御できるため、固定ノズルに簡素化される。

 第2段は、H-ⅡA・H-ⅡB第2段の改良型である。

 ロケット最先端部の保護カバーであるフェアリングは、全長が異なる2種類(直径5.2メートル、全長10メートルと16メートル)を開発。

 射場種子島(たねがしま)宇宙センターの大型ロケット発射場を改良・改修して使用する。

 上記の新規開発、統一、改良・改修等に加え、製造工程や射場工程の高度化・自動化等を図り、信頼性の向上、大幅な打上げ価格の低減を実現する計画である。

 打上げ能力の目標は、LE-9を2基、SRB-3を4本装備した形態(H3-24L)で静止遷移軌道に6.5トン以上、LE-9を3基装備し、SRB-3なしの形態(H3-30S)で高度500キロメートルの太陽同期軌道に4トン以上である。

 2015年度(平成27)に開発に着手。2020年度に1号機を打ち上げる計画である。

[渡辺篤太郎 2017年4月18日]


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知恵蔵mini 「H3ロケット」の解説

H3ロケット

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2020年度の打ち上げを目指し開発している国産大型ロケット。15年7月8日に発表された概要によると、総開発費は約1900億円で、現行のH2Aと比べ、打ち上げ能力は約1.5倍の6.5トン以上、全長は10メートル長い63メートル(国産ロケット史上最長)となり、打ち上げ費用はH2Aの半額の50億円を目指す。打ち上げにかかる日数も半減させて、年に6回の打ち上げを可能にするとしている。

(2015-7-10)

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