21世紀初頭の多様な人工衛星・探査機の打上げを高い信頼性と低コストで行うために、宇宙開発事業団(NASDA。現、宇宙航空研究開発機構(JAXA))が開発した2段式大型打上げロケット。複数の形態がある。
液体酸素(液酸)・液体水素(液水)推進剤を使用する直径4メートルの第1段と第2段は各形態共通。第1段に装着する固体ロケットの種類および本数によって打上げ能力の異なる4形態が開発されたが、現在は固体ロケットブースター(SRB-A3)を2本または4本装着する2形態が使用されている。また、ロケット最先端部の保護カバーであるフェアリングは、標準的な衛星用、形状が大きい衛星用、2衛星同時打上げ用等、多様なものが開発されている。
機体全長はフェアリングにより異なり53~57メートル、発射時質量はSRB-A3の本数により約289~445トン。打上げ能力は、静止遷移軌道に4~6トン、低軌道に10~15トン。
1994年(平成6)に第2段の開発に、1996年に全体の開発に着手した。システムの簡素化、製造しやすい設計の採用、製造方法の改善、点検整備の自動化等により、従来の主力機H-Ⅱロケットに対して打上げコスト(製造費および射場作業費)を半減した。開発の終盤にH-Ⅱが2機連続して打上げに失敗したため、開発期間を1年半延長し、開発体制の刷新・強化、開発試験の強化、開発の詳細を点検・評価する方法の革新等を図り、2001年(平成13)8月、H-ⅡA1号機の打上げに成功した。射場・射点は、種子島(たねがしま)宇宙センター大型ロケット発射場第1射点を使用。
「民間でできることは民間で」という政府の方針により、製造と打上げの責任がJAXAから三菱重工業に移管され、13号機(2007年打上げ)以降は民間の打上げサービスとして運用されている。JAXAは、引き続き飛行安全管制を含む安全監理を担当している。
2016年末時点で、31機発射されて30機成功し、「ひまわり」「かぐや」「はやぶさ」などの大型衛星・探査機35機、小型衛星39機を所定の軌道に投入した。打上げ成功率は96.8%である。打上げ失敗は6号機で、原因は、固体ロケットブースターのノズルが、燃焼ガスにより局所的に大きく浸食されたため。その後、浸食のメカニズムの徹底的な解明が行われ、対策がとられた。
なお、H-ⅡAは、後継機H3ロケットの開発が完了するまで使用される計画である。
[渡辺篤太郎 2017年4月18日]
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