日本大百科全書(ニッポニカ) 「NBCR兵器」の意味・わかりやすい解説
NBCR兵器
えぬびーしーあーるへいき
大量破壊兵器とほぼ同義であるが、具体的に核兵器Nuclear weapons、生物学兵器Biological weapons、化学兵器Chemical weapons、放射能兵器Radiological weaponsの4種の兵器をさす表現。NBCR兵器の使用は被害が甚大であるうえ、非人道的であり、国際的に実験や使用・保有の禁止・制限などの各種条約の締結を目ざす動きがあるが、かならずしも批准国は増えていない。
核兵器には原水爆、中性子爆弾などがあり、炭疽菌(たんそきん)やボツリヌス菌などは生物学兵器、サリンなどの毒ガスや枯れ葉剤などが化学兵器にあたる。放射能兵器は直接的な破壊をねらう核兵器と異なり、放射性物質の散布による放射能汚染を目的とした兵器である。1991年の湾岸戦争終結時に、国際連合安全保障理事会が決議した和平条件(安保理決議687)において初めて包括的に規定された。NBCR兵器や大量破壊兵器は急速に高度化、小型化が進んでおり、テロに小型爆弾などが使われる脅威が増している。
NBCR兵器を禁止する条約のうち、核兵器については、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国以外の保有を禁ずる核不拡散条約(NPT)が1970年に発効し、1995年には無期限延長された。日本は1976年(昭和51)に批准している。しかし核兵器を保有するインド、パキスタンは未加盟である。北朝鮮は2003年に脱退(1993年にも脱退を表明したが撤回)後、2005年に核兵器保有を宣言した。加盟国であるイランと非加盟国であるイスラエルは、核兵器保有の疑いをもたれている。
生物学兵器と化学兵器はジュネーブ議定書、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約などで開発、生産、保有、使用が禁じられている。また、放射能兵器を禁ずるため、核物質防護条約や核テロ防止条約で核物質や原子力施設を妨害破壊行為から守ることが規定されている。
[編集部]