枯れ葉剤(読み)カレハザイ

デジタル大辞泉 「枯れ葉剤」の意味・読み・例文・類語

かれは‐ざい【枯れ葉剤】

ベトナム戦争で、米軍密林に大量に散布した除草剤2,4-D(ジクロロフェノキシ酢酸)と2,4,5-T(トリクロロフェノキシ酢酸)との混合物で、ダイオキシンを含み、奇形児がん多発など多くの二次的災害をひき起こした。

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共同通信ニュース用語解説 「枯れ葉剤」の解説

枯れ葉剤

米軍がベトナム戦争中の1961~71年、南ベトナム解放民族戦線の潜む密林を破壊する目的で散布した除草剤。7200万リットル以上が空中からまかれ、最も多く使われたのが「エージェント・オレンジ」と呼ばれる種類のものだった。猛毒のダイオキシンが含まれ、散布地域では、がん患者や先天性異常児、流産死産などが多発。米国韓国の帰還兵らにも被害が出た。枯れ葉剤にさらされたベトナム人は480万人、被害者は子どもや孫らの世代も含め300万人以上に上るとされる。(ハノイ共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「枯れ葉剤」の意味・わかりやすい解説

枯れ葉剤
かれはざい

農薬の用途上の分類で落葉(らくよう)剤にあたるものを俗称する場合と、マスコミ用語として2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5-T)系除草剤をさす場合がある。農薬界や学会では通常は落葉剤の用語を使うので、枯れ葉剤という場合は、草木を枯殺させる2,4,5-T系除草剤のみをさすことが多い。マスコミがこれを枯れ葉剤と呼称した由来は、ベトナム戦争の際、密林の中に隠れている南ベトナム解放民族戦線の兵士を発見する目的で、密林を枯らすためにアメリカ軍が航空機から2,4,5-T系除草剤を散布したことによる。アメリカ軍がこの除草剤をオレンジ剤とよんでいたためオレンジ作戦などと称したが、日本のマスコミはこれを枯れ葉作戦といい、この目的で使った薬剤を枯れ葉剤とよぶようになった。

 2,4,5-T系除草剤を合成する際に不純物として超微量含まれるダイオキシンが、1969年、アメリカでの動物実験によって催奇形(さいきけい)性や発癌(はつがん)性のあることが判明したため、アメリカは2,4,5-T系除草剤の使用を中止した。日本では1965年(昭和40)ごろから、おもに営林署(現、森林管理署)関係で使用されていたが、アメリカでの経緯を考慮し、1971年に2,4,5-T系除草剤の使用を全面的に取りやめた。ベトナムで他地域よりも多くの先天性障害児がみられる理由を枯れ葉作戦の結果とする説がある。また、大量の枯れ葉剤にさらされた従軍アメリカ人のなかからも先天性の障害児が生まれた例もあるといわれる。

[村田道雄]

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